職人を救う作戦⑦【職人を「伸ばす」戦略~画期的な工法を検証】

皆さん、こんにちは!

GENBA LAb.の武田です。中小ゼネコンで現場監督歴17年、所長歴11年の経験があります。

「建設業は伸び悩んでいる」と思い、2020年8月に会社を辞めて独立起業しました。建設業界全体の後方支援をしていきます。

  • 建設業のデジタル化
  • 生産性を上げる方法
  • 部下の育て方
  • 先輩や職人との接し方
  • 図面の読み方
  • 悩みの解決法

などなど、主に、現場監督目線での配信になります。 上司にとっても若手や新人にとっても、役に立つ配信をどんどんしていきます!

職人を救う作戦シリーズの第7段。

前回、職人を「伸ばす」ための戦略の内、「生産性をあげる3つの方法」より、【ロボット化】について検証戦略について解説しました。
(参考:職人を救う作戦⑥【職人を「伸ばす」戦略~ロボット化はくるのか】

今回は、「生産性をあげる3つの方法」の中の一つ、【画期的な工法】を検証してみたいと思います。

画期的な工法とは何か

まず、画期的な工法の定義について触れてみましょう。いろいろな捉え方ができるので、整理する必要があります。

今回は、あくまで「職人さんの生産性を上げる」ための提案です。生産性を向上させるということは、端的に言うと「効率が良い」ということに他なりません。

ですので、画期的な工法というのはつまり・・・

○ 職人さん一人当たりのこなせる仕事量を大幅に増大させる工法
○ 必要な工期を大幅に減少させる工法

このどちらかを満たせられる工法ということになります。

過去の画期的な工法は?

過去、そういう意味での画期的な工法というのは、たくさん採用されてきました。厳密にいえば、すべての技術が画期的な工法の集合体であるとも言えます。

思いつく限り、古いものから事例をあげてみましょう。

・ 足場は従来丸太、もしくは竹に頼っていたが、枠組み足場工法が一般に普及した
・ 土壁、漆喰、モルタル塗りと変化してきた従来の壁に代わり、石膏ボードが登場した
・ 人力で練り混ぜ、運んでいたコンクリートの打設は、圧送車により人員を激減させた
・ 資材の敷地内運搬手段は、クレーンに置き換わった
・ 高さの均一化は、水の高さにより確認する方法から、オートレベル等により機械化された
・ 鍬や鋤、スコップでの掘削作業は、パワーショベルに置き換わった

・・・あげればきりがありませんが、文化の進歩と共に建設業も確実に進化を遂げてきたと言えます。

では次に、昨今普及されている事例をあげてみましょう。

・ 釘からビスに、げんのうからインパクトドライバーに切り替わり、ワイヤレス化が進んだ
・ 床の金コテ押え作業は、騎乗式の金コテ機によって人員を少なくした
・ スラブ型枠は、木製型枠からデッキ型枠に代わり、型枠解体作業を激減させた
・ 屋上防水はアスファルト防水から、シート防水が主流となった
・ 木材の加工は、現地での採寸・加工の流れを、工場プレカットが断ち切った
・ 老朽化した鉄筋コンクリート造の建物は、解体せずに炭素繊維により強化、長寿命化が可能になった

・・・こちらもあげればきりがありませんが、やはり時代と共に確実に進化してきています。

先端での画期的な工法

ここでもうひと種類の事例も紹介させてください。

○ GPSの発達により、3次元での正確な位置がわかる機能が発展した
○ タブレット端末を利用して、図面の管理をより明確に行えるようになった
○ ガス圧接により、継ぎ目のない鉄筋を施工できるようになった
○ 集成材の進歩により、大スパンの木構造が施工可能となった
○ ウェアラブル端末の進化により、マニュアル・手順書を見ながら作業を行えるようになった
○ ビックデータによる分析により、現場の危険個所をあらかじめ抽出可能になった
○ センサー類の発達により、建築物の劣化が判断しやすくなった

・・・こちらも、建設業が発展してきて、できないことができるようになった事例です。

要するに間違いなく、業界は進化してきています。進化は、しているのです。していますが・・・。

良く確認していただけたでしょうか。上の2種類の事例については、明らかに省力化が進み、人員の削減につながりそうな事例です。工期短縮も現実的に可能となり、現在も採用され続けております。これは生産性の向上の好事例そのものなのです。

ですが、3種類目はどうでしょうか。
より品質の良いものが作れるようになった事例。
今までできなかったことができるようになった事例。

そうなんです。3種類目の事例はすべて、良いものを求めた結果、仕事量は全く減っていないのです。むしろ増えてしまっているものまであります。

これは、科学の進歩という観点で見ると、とても素晴らしいことだと思います。これからもどんどん進んで行くべき事象と言えるでしょう。

しかし職人が減少している今、省力化、工期短縮の観点から見ると「画期的な工法」では決してありません。むしろ品質向上という定義名分に隠れ、生産性低下をももたらす、非常にまずい現実なのです。

まとめ

これらをまとめると、こういう結論になります。

「画期的な工法は、日進月歩ではあるが、早急にどうにかできるものではない」

新しい工法が生み出されたとしても、それが品質向上を目的としている工法ならば、むしろより一層職人さんの人数を必要とするものもあります。

便利なものは、使いこなせば効率がよいのかもしれません。ですがその反面、今まで隠れていたあいまいな部分を明確に洗い出してしまうことが多いのです。

【やらなきゃいけないのはわかっちゃいるが、現実にはやっていないこと。】
実はかなり多くありせんか?おそらく、1つや2つは皆さんの頭に浮かんだはずです。

やった方がいいけど、やらなくても問題ないものは、この世にたくさん存在します。ものの本質を見ずに、体裁を整えているだけのこともたくさんあります。それもこれも、品質向上の観点では「やらなきゃいけないこと」に変換されてしまうのです。

人手が潤沢に存在していて、余裕があって。その上で行う品質の向上は、明確な進歩です。

ですが、やることが困難なのに無理にやろうとすることは、進歩なのですか?いいえ。それは明確なパワハラです。

対価に相応しない仕事は悪。働き方改革の根幹がそこにあるのであれば、改革をしてほしいものです。

まずは、進歩を止めて、地固め。インフラのない、道なき道を指さして、今日中に向こうの街にこれを届けろと言われてもそれは無理な話。品質は、実現し継続して初めて向上したと言えるのだという事をわかってほしいものです。

繰り返しになりますが、品質を優先して足元を見ない現状が多く存在するのであれば・・・

「画期的な工法はほとんど期待できない」ということになります。そして画期的な工法が提案されたとして、その技術が我々中小建設業に届くのはまだ先の話になりそうです。

これで、生産性の向上についての3つの提案の2つを否定してしまったことになります。

次回は、3つ目の提案。「職人をパワーアップする」について検証していきます。

大丈夫。それでも建設業の未来は明るい!