本記事では新人研修の必要性を解説していきます。
現在、建設業は人手不足だと言われています。だから、じっくり教えることができない→若手が育たない→中核の現場監督の手が空かない→忙しくてじっくり教えることができない、この負のループに陥ることになります。これでは、業界は良くなっていかないので、どこかで断ち切らなければいけません。
そこで目をつけるポイントが若手育成になります。新人をしっかり育成することができれば、やがて現場全体が楽になります。ぜひ、この機会に教育について考えてみてください。
新人研修の必要性とは

研修なんて必要ない。そんなもの、仕事をしながら現場で覚えていくものだ。そう考える人は多くいます。でも、ちょっと周りを見渡してください。どういう現状になっていますか?本当に変えていく必要はありませんか?
今回は「なぜ新人研修は必要なのか」について、しっかりと考察していきます。
「新入社員研修は必要なのか」これは、教育や採用を任される人であれば一度は考えることだと思います。もちろん私は、「やるべきだ」と考えています。仕事を始める前のセットアップとして、初期教育はとても重要だと感じており、特に今の時代においては必須だと感じています。
ただし研修内容は、一昔前と同じカリキュラムで進めては全く意味がありません。今の時代に即した内容にしていかなければいけないのです。今回は、新人研修の必要性について、そのロジックをしっかりと理解してもらえるように解説してきたいと思います。
ところで建設業の新人の離職率をご存じでしょうか。厚生労働省が発表しているデータによると、就職後3年以内の離職率は大卒で27.8%、高卒で45.3%となっています。全産業の離職率から比べると、大卒は少しだけ離職しづらく、高卒はかなり離職しやすい傾向になっています。
このデータをざっくりと考察するなら、大卒の多くは大手ゼネコンに入社するために低くなり、高卒の多くは中小企業に入社していくために高くなると言えるでしょう。簡単に言うと、中小企業は大手企業に比べて離職率が高いと言えるようです。
とはいえ、そんな大手ですら3年以内に3割近い人間が辞めてしまうという現状があり、なかなか定着してくれないという悩みはどこも共通なのだと感じます。だから「新人研修はするべきだ!」というつもりはありません。
なぜなら、建設業の離職率の高さは今に始まったわけではないから。いつの時代も、辞める人は辞めるからです。
だったら新人研修は意味がないと思っていませんか?そんなことはありません。よく考えて下さい。今と昔で変わってきた状況はありますよね。きっとみなさんが一番感じているはず。それは何かというと「技術レベル」です。
「俺が3年目の頃は、もう現場を任されていた」なんていうのは良くある武勇伝。それに比べて今の若いやつらは全然育ってこない。やっぱり、技術のレベルは段々と下がっている。そう考えている人は多いはずです。
恐らくこれは事実であり、相対的に見ると技術レベルは下がっているのは間違いないと感じます。ただここにはロジックがあり、決して今の若者の能力が落ちているわけではないのです。むしろ僕は、今の若者の方が圧倒的に能力は上だとすら感じています。
能力は高いが、レベルが落ちている。訳が分かりませんよね。私は、だからこそ新人研修を行う必要がある主張しているわけであり、そして昔と同じカリキュラムを行っていても意味がないと言い切れる理由になるのです。
新人研修をするべき理由
ではここから、僕が新人研修をするべきだと考える理由について、1つずつ紐解いてお伝えします。
◆一昔前より、業務レベルが跳ね上がっているから
ベテランとして働く先輩たちが若い頃の時代の業務量と比較すると、現代の若者の働く業務量は比較にならない程増えています。そしてレベルも跳ね上がっています。これについての詳細は、以下の記事をご参照下さい。

記事にも書きましたが、以前に比べて業務量は圧倒的に増えているのにも関わらず、ベテラン層は「昔よりも楽になっているのに・・・」と考える人が多く存在します。まずはこの思考ギャップを払拭することが必要です。
その上で、それでも会社は継続していかなければいけない責務があります。であれば、単純に成長速度を上げないと追いつけないことになります。かと言って無理強いするわけにはいきません。
だからこそ質の高い研修を行い、成長を加速させる必要があると考えるわけです。
◆SNSの重要性と危険性を、先輩が理解していないから
現代は情報化社会です。この情報をうまく活用しているかどうかが、効率化のカギになる事は必然と言えます。単純な話ですが、「世界中で蓄積されている知識」と「皆さんの脳に詰め込んでいる知識」どちらが多いでしょうか?と聞くと、答えは分かると思います。
今までは世界中にあるその知識を取り出すことが困難だったために「脳に知識を詰め込んだ方が良い」という常識を作ってきました。ただし、ITの進歩がスマートフォンを作り出しました。これにより、いつでもどこでも世界中の知識を、瞬時に検索することのできる土俵が整ったと言えます。この利便性はまだまだ加速するでしょう。
ところでなぜ、そんなにも情報量が増えたのかというと、それは「気軽に情報発信ができる」媒体である、SNSの発達も大きく貢献しています。詳しくは以下の記事に書いておりますので、是非ご参照ください。
SNSは危険。情報は簡単に出すな。そうやってストップをかけたとしても、便利なものは使いますよね。だったら逆に、その強み十分に活用できるようにすれば良いだけの話なのです。
情報を出すことは危険な事。だけど情報を知る事は大切な事。
そういう矛盾した考えではなく、教育によってルールを教えて活用してもらうのです。包丁を「危険な物」と捉えて取り上げるのは無策でしかありません。上手く使う方法を教育するというのが秩序を保つ策だと考えます。そのために研修は必要と言えるのです。
建設業には失っちゃいけない魂があるから
この変革の時代において、常識はどんどんとかわってきました。人々の生活を作り、安心と安全を確保する責務のあるこの建設業界も、時代に合わせ変化しなければいけません。
ただし、闇雲に変わっていくのは正しい事なのでしょうか?と考えると、僕は違うと思います。なぜなら建設業には、絶対に変わってはいけない「魂」があると思うからです。太古から続く長い長い歴史の中で培われた、守るべきものがあると思うのです。
まだ真っ白な新人に対し、仕事はどうやってやるのかというテクニックばかりを教え、奔放に育成してしまうと、本当は変えちゃいけない魂まで変割ってしまいかねません。だからこそ、これからの新人には「魂」の部分は知っておいてもらうべきだと考えます。だから現場に出る前に、しっかりとした研修が必要なのです。
◆教えられることに慣れている時期だから
ついこの間までは学生でした。席につき、先生から教えられるという時間を12年以上続けてきたわけです。新人の状態では、まだまだ「教えられる」という気分が抜けきれません。もちろん、仕事は自分の頭で考えて進められるようにならないといけないのは分かります。
ですがまだ学生気分の内に、机上で教えられることだってあるはず。現場に出てしまうと、そういう機会はなかなか獲りずらくなるのは事実ですよね。だからこそ、今のうちに集中して植え付けることを、的を絞って教えるべき。そのタイミングとして、新人研修は有効だと考えます。
古い先輩と分かり合えるため
いつの時代もそうですが、年配者と若者はなかなか分かり合えないものです。「最近の若いやつらだったら」「それジェネレーションギャップっすよね」そういう不毛な食い違いは多く存在します。心当たりありませんか?
だからこそ、共通言語を一つでも作っておくことは大切だと感じます。先に会社にいる先輩側はすでにたくさんの仲間がいます。その中に、か弱い新人が入社するわけです。考えただけで胃が痛くなりそうなその状況、やっぱりハードルが高く辞める原因の一つにもなり得ます。
その状況を少しでも緩和するためにも、新人側には「共通言語」を知っておいてもらった方がよいと思いませんか?つまり少しでも専門的な知識を手に入れてもらい、それを糸口に先輩たちに溶け込んで欲しいなという願いです。
そうすれば、全く会話の通じない異星人から、ちょっとは話の通じる人に昇格することはできますよね。これによってお互いの壁を少しでも低くするために、社風や基礎知識を新人研修で学んでもらうのです。
まとめ

もちろん、現場で必要な基礎知識を教えることは大前提です。初期に最低限必要なスキルとして、設計図がわかる、施工図が読める、工程表を理解できる。その程度はしっかりと教えてから現場に配属されるべきだと考えます。
ですが、そういう実務以外にも、研修を行う意味があると感じていただけたのではないでしょうか。「そんなことは現場で覚えればいい」という今までの考えを、少しでも見直すきっかけになったのであれば幸いです。
新人に必要なのは、まずは居場所です。
明日もここに来ていいんだと、心地よく思ってくれる場所を作ってあげることが必要なのです。そのためには、役割を与えることが必要。そしてできることが増えると役割も増やせます。そしていつしか「楽しい」と思ってくれるようになります。
早く組織の一員になるために。そうなるまでの時間を加速させるために。新人研修は必要不可欠だと考えています。