現場監督として入社し、1〜3年掛けて最低限の知識を教え込まれます。会社に致命的な損害を与えないレベルの知識です。つまり法律や会社のルールであり、社会人としてのマナーであり、かつ現場を理解するための図面の読み方や仕様書の活用知識がこれにあたります。
ここをクリアしたと認められたら、いよいよ技術者としてのスキルを学ぶフェーズ②【現場を動かす】です。
若手育成のフェーズ②:現場を動かす
すでにその辺の素人とは違い、安全に現場を歩く術は身についたと言えます。そして放っておいても軽率で致命的なミスは犯さない「基礎力」は身についたということになります。
次の段階では、技術者としての指示を与えて、経験を少しずつ実績にしていかなければいけません。小さくてもいいので、自分の意思で効率よく現場をコントロールできるようになり、仕事の楽しさを知る「自分のため」のフェーズということです。
そう聞くと、急にレベルが跳ね上がったと思われるかもしれませんが、焦ってはいけません。目的はあくまで「現場を動かす」ところまでに留めます。勘違いしてほしくないのは「現場を管理する」わけではないことです。
自分で計画をし、打合わせをし、手配をして自分のイメージ通りに現場を動かしてみる。そしてイメージと違った部分を検証し、修正していくことを繰り返します。
”あいまいな指示”を与える
今までは、ただ与えられた指示をこなすのが仕事でした。ただし業務の最終着地地点は、自分で決めた現場運営プロセスを、自分で組み立てていくことです。
「この現場、頼むよ」というたった一言の指示からイメージを膨らませ、仕事を自分で生み出していける人間に育て上げることです。その最初ですから、間違えてもいいから自分で考え、自分で決定して進めることが重要です。
では具体的にどうすればいいのかというと、「あいまいな指示を与える」ことです。明確な指示を与えるのではなく、自分で決定していく余白を残してあげるのです。
例えば、鉄筋の写真を撮るという場面だったとします。
最初は「この参考写真と設計図のこの部分をみて、今日中にこの範囲の写真を撮ってきて。撮ったら見せてね」というのが具体的な指示です。
これを少しあいまいにすると、「A工区の鉄筋の写真を今週中に撮っておきたい。撮る項目と日程を計画してくれれば、撮る前に一度チェックしておこう。」という感じです。
ポイントは3つ。
◇日程のゴールだけを伝えて計画させる
◇計画段階で一度チェックをしておく
◇実際にやっている間は口出しをしない
また「命令」ではなく「相談」をするという姿勢が成長には大切な要素。現場の一員である実感がうまれやすくなります。
実業務でも期日の設定は工程表で決められていることが多く、そこは明確にしても問題ありません。
またやり終わってから「なんでこうなっているんだ」と怒るのではなく、スタート地点で軌道修正をしてあげることによって、責任の所在は先輩にあることを明確にしてあげます。あとはただ行動を見守ります。
こうやってできるようになっていけば、「配筋写真、そろそろ計画しておくんだよ」というように、指示をどんどんあいまいにしていきます。そして最終的には「この現場、頼むよ」というだけで計画ができる人間ができていくのです。
自分で考えて決めるということ。その実感が重要です。
最初は失敗しづらい部分を任せ、小さな成功を経験させます。自分の力で打ち合わせを進め、工程や仮設を計画できるようになることがこのフェーズの目標です。
1つの分野ができたからといってレベルを上げてしまいすぎると、責任が重くなり致命的なミスを誘発しかねません。そうなると、せっかくの自信を失ってしまいます。あくまで慎重に指示を出していくようにしましょう。
次回はフェーズ③「現場を管理する」の解説をしていきます。
