若手の育成はどの会社も苦慮するところ。思ったように成長してくれなかったり、いつまでたっても指示を待つ人間になってみたり。簡単ではないことを日々痛感していることでしょう。今回は、部下を育成する側の心がけについてお話しします。
結論から言います。
【うまくいったことを褒めて欲しい部下よりも、失敗したことを隠さない部下を作れ】
これがおそらく最も大切な部分だと思います。
残念ながらこの業界は、結果が全てです。どんなに苦労して造り上げたとしても、雨漏りのひどい建物は受け入れられません。「頑張ったんですけどね」は通用しないのです。・・・仕事である以上、どの業界も同じだと思いますが。
そのためにたくさんの経験を積み、たくさん失敗して改善していく。そうやって高い技術を手に入れていくことが技術者の命題となるのです。全ては質の高い成果品を、事故なく提供するために。
つまり、本来うまくいくことは褒められることではなく、当たり前でなければいけないのです。これがきっと技術者としての根本の考え方。だから「褒められること」と原動力として働くと、褒められないことは意味がないという考えに傾いてしまいます。
結果として、怒られることを怖がるようになります。目的が褒められることであるなら、それ以外は良くない事だと感じるからです。これでは言われたことや期待されたことよりも上の結果を生み出すことはなく、いつまでも遣いっ走りの人間が育ちます。
そして不測の事態が起きてしまった時には、逃げる・隠すという選択をしたくなってしまうのが人間の性だと感じています。
だからこそ技術者の価値観は、「自分が納得する物を造り上げること」だと考えます。つまり、仮に誰に褒められることがなかったとしても、自分が良いと感じることをやっていくべきだということです。
もちろん「良い」の判断基準は、社会通念上の標準品質を超えていなければいけなく、その価値観は教えられる必要はあります。だからこそ初期教育が必要だと感じているわけです。
「自分の納得できるものを作ること」が原動力になると、失敗することや怒られることは、ただの通過地点に変わります。例え怒られたとしても、自分の想い描くイメージ通りになればそれで良いと思えるからです。
失敗したときにも、それを修正したり改善していくのは、自分が納得できないから。誰が何と言おうと、納得するまではなんだか気持ち悪い。どんなに自分の都合の悪いことだったとしても、ゴールするために必要なことならやるという価値観が大切だと考えています。
これが「失敗したときに隠さない部下を作れ」ということであり、「うまくいったことを褒めてほしい部下」は探求心や好奇心のない、指示待ち君になってしまうのです。
まずはこれを心に留めて教育していくことが重要だと感じます。部下から何か教えるときや、質問を投げかけられた時。端的に答えだけを教え、それをしっかりとこなしてきた部下を褒める。そんな教え方ではうまく育ってくれません。
少しモヤモヤが残るような「ヒント」を与え、あくまでも答えは自分で出し、行動を起こすことを助長してあげるのです。具体的な行動の仕方を答えるのではなく、考え方を伝えるというのが部下育成の基本だと思います。
どんな小さなことでも、相手に考える機会を与えましょう。そして決定させるのです。その後に出てきた結果が良くても悪くても、長期的に見ればどうでもいいレベル。
そんなことよりも、考えたり悩んだりしながら答えを自ら導き出し、行動に移したというそのプロセスが大切。そこを手助けし、見守っていくことが重要だと考えます。
短期で結果なんてでません。おおらかな目線で、自分で決定するための土俵を用意していくことが、自立する部下育成の鉄則なのです。