施工管理の仕事量を平準化する方法｜忙しさを可視化して残業・属人化を防ぐ仕組み

「施工管理は忙しくて当たり前、現場は休めなくて当然」
多くの施工管理会社では、今もなおそんな前提のもとで現場が回っています。

しかしその一方で、「なぜ特定の人に仕事が集中するのか」「なぜ有給が取りづらい状態が改善されないのか」「本当に人手不足だけが原因なのか」と疑問を感じている経営者・管理者の方も多いのではないでしょうか。

実は施工管理の働き方を見直すヒントは新しい人材採用や外注ではなく、社内の仕事量を“見える化”することにあります。

施工管理の忙しさは均一ではないという現実

施工管理の仕事を俯瞰して見ると、業務量には明確な波があります。着工前、躯体工事の節目、内装前の段取り、検査前など、特定の時期に業務が集中する一方で、工程が安定している期間や次の現場待ちのタイミングでは、比較的余裕のある状態も発生します。

にもかかわらず、会社全体としては「常に忙しい」という認識が共有されがちです。この認識のズレが、仕事の偏りや長時間労働を固定化させる要因になっています。

忙しさが可視化されないことで起きる経営リスク

現場では全員がパソコンに向かって作業しているため、誰が本当に忙しく、誰に余力があるのかが外からは分かりません。その結果、仕事は「現場を一番分かっている人」「仕事が早い人」「断らない人」に集中していきます。

これは属人化を進めるだけでなく、特定社員の疲弊、離職リスクの増大、組織全体の生産性低下につながります。経営者や管理者が把握できていないまま、現場の負荷が限界に近づいているケースも少なくありません。

施工管理と事務職の分断は構造の問題

施工管理が忙しい一方で、事務職が比較的安定して有給を取得している状況を見ると、不満や不公平感が生まれやすくなります。しかしこれは個人の意識の問題ではなく、業務内容と繁忙期の違いによる構造的な問題です。

本来経営側が考えるべきなのは、「忙しい部署と余力のある部署が存在しているのに、それを調整できていない会社の仕組み」にあります。

経営者向けのシンプルな解決策

そこで提案したいのが、「明日どれぐらい忙しいか」を毎日退勤前に4段階で申告させる仕組みです。やることは非常に単純で、社員は業務終了前に「明日忙しい」「明日やや忙しい」「明日多少余裕あり」「明日余裕あり」のいずれかを選択するだけ。この結果を、管理者だけでなく社員全員が一覧で確認できる状態にします。

ポイントは、業務内容や理由を書かせないことです。「明日は検査があるから」「書類が溜まっているから」といった説明は不要で、あくまで感覚ベースで構いません。理由を求めないことで入力のハードルを下げ、形骸化を防ぎます。

また、「普通」という選択肢をあえて設けないのも重要です。人は迷うと無意識に「普通」を選びがちですが、4段階にすることで必ず“忙しい側”か“余裕がある側”に寄せて判断させることができます。これにより、社内の稼働状況が曖昧にならず、管理者が判断しやすくなります。

仕組み自体は高度なIT投資を必要としません。社内チャット、スプレッドシート、簡易アプリなど、既存のツールで十分に運用可能です。重要なのはツールではなく、「明日の忙しさを全員で共有する」というルールを会社として正式に運用することにあります。

可視化がもたらす組織運営上のメリット

この仕組みを導入することで、管理者は誰が逼迫していて、誰に余力があるのかを即座に把握できます。これまで属人的に集中していた仕事を余力のある社員へ振り分ける判断がしやすくなり、結果として仕事量の平準化が進みます。

また、いわゆる「稼働率の低い社員」も自然と可視化され、戦力として再配置しやすくなります。さらに、会社全体として今が繁忙期なのか、比較的落ち着いた時期なのかをデータとして把握できる点も、経営判断にとって大きな価値があります。

導入時に経営者が整えるべき前提条件

一方で、この仕組みを機能させるには経営側の姿勢が重要です。忙しさの表示が評価に直結しないこと、余裕があることは悪ではないこと、助け合う文化を会社として推奨することを明確に示す必要があります。

ルールや目的を曖昧にしたまま導入すると、実態と異なる表示や形骸化を招きかねません。経営者・管理者が率先して意図を説明し、文化として根付かせることが成功の鍵になります。

まとめ

施工管理会社が抱える「忙しさ」「休めなさ」「仕事の偏り」は、個人の努力や根性論で解決できる問題ではありません。施工管理の仕事には確実に波があり、その波を可視化せずに放置してきたことが、属人化と長時間労働を生んできました。

明日の忙しさを見える化するというシンプルな仕組みは、社内で仕事を平準化し、人材を有効活用するための第一歩になります。外注や採用に頼る前に、まずは社内の稼働状況を正しく把握する。その視点こそが、施工管理会社の持続的な経営と働き方改革につながっていきます。

現場ラボでは、施工管理の働き方をテーマに、現場と経営の両方の視点から改善ノウハウを蓄積しています。人を増やさずに負担を減らす方法、仕事が偏らない仕組みづくりなど、実務に落とし込める提案を重視しています。
「自社の場合はどうだろう？」と感じた方は、ぜひ一度ご相談ください。会社の状況に合わせた現実的な改善の方向性をご提案します。
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