採用活動において、企業PRが果たす役割はこれまで以上に大きくなっています。特に、SNSやホームページといったデジタルツールを活用することで、従来の方法ではアプローチが難しかった層にリーチすることが可能です。
本記事では、実際に職人会社が取り組んだ企業PRからの採用の流れの成功事例をもとに、効果的な情報発信の手法を解説していきます。この事例を通じて、企業PRの本質を理解し、自社の採用活動にどう活かすべきかが見えてくるはずです。
この記事を読むことで、単なる情報発信ではなく、求職者に響く「伝え方」の具体的なポイントが学べます。また、採用成功の鍵を握るホームページやSNSの役割を深く理解することで、より戦略的なPR活動が実践できるようになるでしょう。さらに、実際の事例から得られる具体的なノウハウを通じて、採用活動に悩む方でもすぐに行動に移せる明確な道筋が見つかるはずです。
読後には、情報発信の重要性を再認識し、採用に向けた具体的なアクションプランを考えるきっかけが得られるでしょう。この記事が、採用活動を成功に導く第一歩となることを願っています。
この記事を書いた人
株式会社 RaisePLAN 代表取締役
武田 祐樹(たけだ ひろき)
【これまでの活動】
- 総合建設業に17年在職後、独立起業。
- 建設現場の生産性向上支援や施工管理の教育支援を展開。
- 中小企業デジタル化応援隊事業(中小企業庁)のIT専門家。
- YouTubeや音声配信、Instagram・メールマガジンなどで情報発信を行い、電子書籍の出版やオンライン講師、オンラインセミナー活動に積極的に取り組む。
- 建設業の現場効率化の仕掛け人としてAbemaPrimeに出演(2023年3月)。
職人会社での成功事例から学ぶ企業PRの効果
企業PRが効果を発揮する具体例として、北海道十勝にある職人会社「有限会社サンエーフレッシュ工業」の事例をご紹介します。この会社では、ホームページを活用した情報発信が採用活動に大きく貢献しました。
特に中小企業や職人会社にとって、SNSやホームページはどのように活用すれば良いのか。成功事例から、その具体的な方法とポイントを学びましょう。
北海道十勝にある職人会社「有限会社サンエーフレッシュ工業」の事例
以前、僕が職人さんの会社のホームページを作らせていただいた際のお話をさせてください。その会社は北海道十勝の音吹町にある「有限会社サンエーフレッシュ工業」という左官屋さんで、2年ほど前に「ホームページを作ってほしい」というご依頼をいただきました。
その際、ただ綺麗なデザインを施しただけでは意味がないと思い、当社ウェブチームと一緒に、会社の魅力や強みを十分に伝えられるホームページを制作しました。具体的には、社長のインタビュー動画や実際の業務風景、さらに新人が成長していく過程を記録した動画も掲載しました。また、Google検索で上位に表示されるよう、SEO対策にも力を入れました。「十勝 左官」「北海道 左官 求人」といった検索ワードでヒットするよう工夫したのです。
当時、僕は「ホームページはじっくりと育てるものなので、成果が出るまでに2年はかかるでしょう」とお伝えしていました。そして先日、その会社の社長さんからご連絡をいただきました。「最近、立て続けに採用の問い合わせが2件も来たよ。ホームページがこんなに効果を発揮するなんて正直驚いている」と、非常に喜んでいただけたのです。このお話を聞いた時、僕自身も本当に嬉しくなりました。
こうした事例を通じて、僕は改めて企業PRの重要性を実感しました。そして今回、この体験をもとに、企業PR、特にSNSやホームページを活用した情報発信がいかに効果的であるかを、より詳しく皆さんにお伝えしたいと思います。
実際に行った具体的な工夫
ホームページ制作において、「求職者が魅力を感じ、応募を後押しする」ことをゴールに据え、以下の具体的な工夫を行いました。
1. 社長のインタビュー動画:人柄が伝わる内容を工夫
単に社長の経歴や理念を語るだけでなく、「求職者に響く内容」を意識して構成しました。具体的には、次のようなポイントを盛り込みました。
- 働く環境への思い
職人さんを大切にしていることや、働きやすい環境を整えるための具体的な取り組みを語ってもらいました。
例:社員の技術向上に力を入れていること、家族的な雰囲気がある職場であること。 - 職人としての誇り
自分たちが手掛ける仕事の価値や、完成時の達成感について具体的に語ることで、求職者が「ここで働きたい」と思えるようなストーリー性を持たせました。 - 社長の人柄が分かるエピソード
実際に社員やクライアントとの関係で印象に残っているエピソードを話してもらい、「どんな人と働くのか」を想像できるようにしました。
2. 新人の成長記録動画:リアリティを追求
新人が実際にどのような仕事を経験し、どのように成長していくのかを動画で紹介しました。具体的には、次のような形で編集を工夫しました。
- 節目ごとの撮影
入社初日から1週間目、1か月目、3か月目といった段階ごとに、仕事内容や先輩との関わり方を紹介する映像を用意。具体的な仕事の内容や学んだことを本人の言葉で語らせました。 - リアルな声を収録
新人の戸惑いや成功体験をそのまま収録し、「自分も最初はこうだった」といった共感を誘う構成にしました。 - 先輩社員との交流場面を挿入
新人を支える先輩社員とのやりとりを見せることで、「チームの一員として迎え入れてもらえる」という安心感を与えました。
3. SEO対策:地域名+職種で上位表示を狙う
採用活動の特性に合わせて、ターゲットがどのようなキーワードで検索するかを徹底的にリサーチしました。
- 想定キーワードの選定
「十勝 左官」「北海道 左官 求人」など、地域名や職種を掛け合わせた具体的な検索ワードを想定。 - ページ内構成の工夫
重要なキーワードをページのタイトルや見出し、本文に自然な形で組み込みました。特に「採用ページ」や「会社紹介」の中で関連性の高いキーワードを頻出させました。 - メタデータの最適化
Google検索結果に表示されるタイトルタグや説明文を、クリックしたくなるような文言に調整しました。
例:「十勝で技術を磨く!左官職人として成長できる会社」など。
4. 写真と動画の活用:職場の雰囲気を視覚的に伝える
求職者が「自分が働くイメージ」を持ちやすくなるよう、リアルな写真や動画をふんだんに使用しました。
- 作業風景の撮影
現場で職人が作業している姿を撮影し、スキルが求められる仕事の様子を伝えました。真剣に仕事に向き合う姿が、会社のプロフェッショナリズムを表しています。 - 社員の笑顔や交流シーン
昼休みや打ち合わせ中のリラックスした様子を撮影し、和気あいあいとした雰囲気を強調。求職者に「自分も馴染めそう」と感じてもらえるよう工夫しました。 - 動画のストーリーテリング化
会社の一日を追った短編動画を制作し、「仕事の流れ」が分かる構成にしました。朝礼から始まり、現場での作業、終業後の振り返りまでをリアルに描写しました。
なぜ企業PRが必要なのか
まず最初に理解していただきたいのは、企業PRが「やった分だけ確実に効果を生む」という点です。特に建設業界では、採用が大きな課題となっていますが、多くの企業はまだSNSやホームページの活用に積極的ではありません。
職人さんの会社など規模が小さい企業では、そもそも「そんなの必要なの?」という意識の方もいらっしゃるでしょう。しかし、現代の若者の採用プロセスを見てみると、PR活動がいかに重要かがよく分かります。
現代の採用プロセス
若い世代の求職者は、企業を選ぶ際にデジタルツールを駆使し、次のようなプロセスを踏んでいます。この一連の流れを理解することで、企業側は採用活動をより効果的に展開できます。
1. SNSで会社を知る
求職者が最初に企業と接点を持つのは、多くの場合InstagramやTwitterなどのSNSです。投稿された写真や動画、社員の日常を切り取ったエピソードを通じて、「この会社は何をしているのか」「どんな雰囲気なのか」といった第一印象を形成します。この段階では、会社そのものの知名度ではなく、SNS上で発信される情報の親しみやすさや共感できる内容がカギとなります。
2. ホームページで詳しく調べる
SNSで興味を持った求職者は、次にホームページを訪れます。ここで確認するのは企業理念や仕事内容、さらには社長のメッセージや社員のインタビューといった、より具体的で深い情報です。ホームページは、会社の本質を伝えるための「顔」とも言える存在です。求職者はここで「この会社は自分の価値観に合うのか」「働く環境として安心できるか」を判断します。
3. 再度SNSで社風を確認
ホームページを一通り見た後、求職者は再びSNSに戻ります。日々更新される投稿や社員の様子を見て、「実際の職場の雰囲気」や「働く人々の人柄」を確認するのです。この段階では、「自分がその場に馴染めるか」という感覚が大切になります。リアルで生き生きとした投稿がある企業ほど、このプロセスで好感度を高められるでしょう。
4. 採用ページから応募を決意
最後に、会社や職場環境への理解が深まり、「ここなら自分も活躍できそうだ」と確信を持てた場合、採用ページにアクセスして応募を決意します。この段階で重要なのは、採用ページへの導線がスムーズであることや、応募に必要な情報が分かりやすく記載されていることです。
ホームページとSNS、それぞれの役割
採用において、ホームページとSNSにはそれぞれ異なる役割があります。この2つを上手に使い分けることが、効果的なPR活動のポイントです。
ホームページは、企業の「本質」を伝える場です。会社の理念や実績、仕事の内容、社長の思いといった深い部分を詳細に伝える必要があります。
一方、SNSは、会社の「社風」や「今この瞬間」を伝えるツールです。社員の表情や職場の空気感、日々の活動の様子などを発信し、求職者が「この職場で自分が働いている姿」をリアルに想像できるようにすることが大切です。
成果が出るまでの時間
PR活動は「即効性」が期待できるものではありません。今回のケースでも、ホームページを公開してから効果が現れるまで約2年かかりました。しかし、情報発信をコツコツと続けることで、確実に結果を得られるという点を忘れてはなりません。
中小企業の企業PRの進め方
企業PRは、もはや特別な取り組みではなく、採用活動の基盤となる重要な戦略です。特にSNSやホームページを活用した情報発信は、採用難の業界ほど欠かせないものとなっています。今すぐにでも始めて、継続することが大切です。
PR活動のポイント
- ホームページでは会社の理念や本質を伝える。
- SNSでは日常の雰囲気や働く環境をリアルに発信する。
- 継続的な発信を心がけ、効果が出るまで粘り強く取り組む。
効果的なPR活動を進めるためには、ホームページとSNSの役割を明確に分けて活用しましょう。ホームページでは企業の理念や本質を丁寧に伝え、信頼を築きます。一方、SNSでは職場の雰囲気や日常の活動を発信し、求職者に「ここで働いてみたい」と思わせるリアルな情報を届けることが重要です。
成果がすぐに出なくても、情報発信を続けることで、数か月後、数年後に採用や企業イメージの向上という形で大きな成果が得られるでしょう。
僕自身も建設業界とITを融合し、業界の成長をサポートしています。PR活動に不安がある方は、ぜひご相談ください。一緒に次の一歩を踏み出しましょう。今日の行動が、未来の成功につながるはずです。