テクノロジーは職人の敵じゃない｜AI・ロボット時代に建設業で“本当に残る仕事”とは

AIやロボット、ITツールが発達するたびに、「それで俺たちの仕事が奪われるんじゃないか」という話題が必ず出てきます。特に職人の世界では、「ロボットなんかに代われる仕事じゃない」「技術をなめるな」という感情が湧くのも自然な反応でしょう。

ただ、本当にテクノロジーは職人にとって敵なのでしょうか。むしろ考え方を少し変えることで、職人がより職人らしい仕事に集中できる時代が来ているのではないかというのが今回のテーマです。

テクノロジーは職人の仕事を奪う存在なのか

体を使って動く職人とAIやロボットは確かに対極にあるように見えます。そのため「いけすかない」「敵みたいに感じる」という感覚を持つ人も多いと思います。ただ、人間はこれまでずっとテクノロジーの進化によって仕事を効率化してきました。

テクノロジーで解決できる部分を任せることで、人間は楽になりますが、この「楽」という言葉が誤解を生みがちです。「楽をする＝技術を磨かない」という話ではなく、テクノロジーでは解決できない部分があるからこそ、人間の技や感覚が生きるという考え方ができます。

少子高齢化で現場はどうなるのか

これから日本は少子高齢化がさらに進み、人口は確実に減っていきます。建設業界も例外ではなく、人はどんどん少なくなります。ただし、道路や橋、建物といったインフラは維持し続けなければなりません。村や町、地方に住む人がいる以上、そこまでインフラを伸ばし、守る仕事は残ります。つまり「人は減るが、仕事は残る」という状態になります。

この状況で今までと同じやり方を続けるのは無理があり、より効率的に仕事をする必要が出てきます。だからこそ、人間にしかできない仕事だけに集中するための取捨選択が必要になります。

実際にテクノロジーに任せられる作業

例えば鉄筋屋や型枠大工の仕事を考えてみると、図面を書く、加工図を描く、材料を加工する、コンクリートを練り混ぜる、資材を運搬する、所定の位置に移動させる、職人であっても関わらざるを得ない書類作成などの作業があります。これらの中には、AIやITツール、ロボットに任せられる領域が確実に存在します。

一方で、現場での微調整、仕上がりを見て「これで良いか」を判断する感覚、状況に応じた臨機応変な対応、人と人とのやり取りは機械には難しい部分です。建設業は現地で一品生産を行う仕事であり、現地対応と職人の判断が必要不可欠です。

職人が本当にやるべき仕事とは

テクノロジーを使うことは、職人の仕事を奪うことでも、職人の仕事を機械でもできるレベルだと見下すことでもありません。人数が減っていくからこそ、本当に職人じゃなきゃできない仕事に集中するために、余計な作業を削っていくという考え方です。

物量が必要な作業や、繊細さを必要としない部分は、機械ができるなら任せてしまえばいいのです。そうやって下の作業が薄くなった結果、現場に残るのは、仕上がりを左右する判断や、誇りを持って「俺が納得するまでやる」と言える仕事だけになります。

まとめ

テクノロジーは職人の敵ではありません。むしろ、職人がより職人らしい仕事に集中するための道具です。すべてを1から10まで手作業でやるから誇りが持てるのではなく、本当に職人にしかできない技や判断を持っているからこそ誇りが生まれます。

どこをテクノロジーに任せ、どこを人間が担うのかを見極めることで、職人の価値はよりはっきりします。AIやIT、ロボットを味方につけた現場こそ、人間らしさが際立ち、これからの建設業界の面白さと美しさをつくっていくはずです。