現場で「この工事写真、本当に必要?」と悩んだことはありませんか?
撮影が足りなければ施工の証拠が不十分になり、逆に撮りすぎると整理が大変。
「何を、どこまで撮ればいいのか」を的確に判断できるようになれば、不要な迷いを減らし、効率的に記録を残せます。
この記事では、工事写真の基本的な目的を明確にし、撮影範囲を判断するための具体的なルールを解説します。
「設計図」「使用書」「施工計画書」という3つの基準をもとに、実際の塗装工事や鉄筋工事を例に撮影ポイントを詳しく紹介。これを読めば、「撮り忘れ」「撮りすぎ」の心配がなくなり、必要な写真を適切に残せるようになります。
撮影ルールをしっかり理解し、日々の業務で自信を持って工事写真を記録できるようになりましょう。
株式会社 RaisePLAN 代表取締役
武田 祐樹(たけだ ひろき)
【これまでの活動】
- 総合建設業で施工管理として17年勤務後、独立起業。
- 建設現場の生産性向上と施工管理の教育支援を展開。
- 中小企業庁「デジタル化応援隊事業」のIT専門家。
- YouTubeチャンネル『建設業を持ち上げるTV』を運営し、登録者1.2万人を獲得。教育特化長尺動画が8万回再生を突破。
- Instagramや音声配信など多メディアで情報発信。
- 電子書籍出版やオンラインセミナーを精力的に実施。
- 2023年3月、AbemaPrime出演で現場効率化施策が注目。
記事の監修

工事写真の目的とは?撮影の意義を理解しよう

工事写真を撮る最大の目的は、正しく施工された証拠を残すこと です。これは単なる記録ではなく、現場で適切に作業を行った という明確な証明になります。
工事が計画通りに進んでいるか、仕様や基準に適合しているかを示すために、写真は非常に重要な役割を果たします。後から確認が必要になったとき、しっかりした写真があることで、「設計通りに施工した」 という確固たる証拠になるのです。
ところが、新人や後輩からよく聞かれるのが、「どこまで撮ればいいんですか?」 という疑問。
この迷いの原因は、実は 「何のために撮るのか?」 という目的を明確に理解していないからなんです。
写真撮影の意義をしっかり押さえておけば、必要な写真を迷わず撮れるようになります!
次の章では、「どこまで撮るべきか?」を判断するための具体的なルール を解説していきます。
工事写真を撮るべき「ルール」とは?

工事写真を撮る際の「ルール」とは、一体どこから来るのでしょうか?
現場では、何をどう撮るべきか迷うことが多いかもしれませんが、実はこのルールには、しっかりとした「根拠」があります。それが「設計図」「使用書」「施工計画書」という3つの基準です。この3つが、写真撮影の具体的な範囲と目的を明確にし、どこまで記録すべきかを教えてくれます。
設計図
工事写真の撮影範囲は、まず設計図に基づいて決まります。設計図は工事の基本方針そのもので、「この場所はこういう仕様で施工しなければならない」といった具体的な指示が書かれています。
例えば、鉄筋工事の場面では、鉄筋の配置や太さ、間隔などが設計図に詳細に示されているため、施工がその通りに行われているかを写真で記録する必要があります。こうすることで、後からでも「設計図の指示通りに施工しました」という確実な証拠を残せるのです。
写真を残しておくことで、たとえば工事後に何か不具合が発生した場合、設計図に基づく適切な施工が行われていたかを振り返る際にも役立ちます。つまり、設計図は工事写真の基本中の基本と言える指針です。
使用書
次に重要になるのが使用書です。使用書には「どの材料を、どのような基準で、どう使うか」といったことが細かく記載されています。塗装工事の場合、使用書には適切な塗料の種類や使用量、厚さなどが定められており、これに従った施工を行ったかを写真で記録する必要があります。
たとえば、特定の厚みを保たなければならない塗装面では、塗料を適正な厚さで塗布したことを示す写真が必要です。もし基準より薄く塗っていた場合、将来的に塗装の剥がれや劣化が早まるリスクがあるため、施工基準に従ったかを示すためにも写真が欠かせません。
このように使用書は、材料や施工のクオリティを保証するためのルールであり、その基準に則った施工をした証拠として工事写真を残すことが求められます。
施工計画書
最後に、施工計画書もまた工事写真の重要なルールです。施工計画書とは、工事の進行方法やスケジュール、安全管理、写真の撮影方針までも記載された「現場運営の指南書」のようなものです。工事の流れや各工程での留意点が詳細に記されているため、計画書に記載されている通りの作業が実行されているか、または計画書に沿った形で進行しているかを写真で示す必要があります。
たとえば、コンクリート打設や仕上げ工程の場面では、施工計画書に「この段階で写真撮影を行う」と明記されていることも多く、その場合はその指示に従い記録を残す必要があります。こうした工程ごとの写真は、後で見直したときに「計画通りに工事が進んでいた」ことを証明する資料として役立ちます。
「どこまで撮るべきか?」を決める実際の事例

実際の現場では、「どこまで工事写真を撮るべきか」が具体的にわからず、撮影範囲に悩むことも多いですよね。そんなときに役立つのが、工種ごとの基準です。ここでは、塗装工事や鉄筋工事といった代表的なケースについて、どのような写真が必要になるのかを詳しく解説します。
塗装工事の場合
塗装工事では、「塗膜の厚さが基準通りに確保されているか」 が品質管理の重要なポイントです。
適切に施工されていることを証明するために、以下の写真を撮影しましょう。
必要な写真
- 使用する塗料の種類・数量が分かる写真
塗料の缶やラベル、開封前の状態を撮影し、使用した塗料の証拠を残す。 - 下地処理の状況
ケレン作業(サビ・汚れ落とし)の様子や、シーラーやプライマー塗布の状況を記録。 - 塗装作業中の写真
ローラーやスプレー塗装の様子を撮影し、施工の工程を可視化する。 - 塗膜厚測定の記録写真
膜厚計を使用し、測定値が基準を満たしていることを記録。 - 施工完了後の仕上がり写真
全体の仕上がりを撮影し、塗装ムラや不備がないことを証明する。
撮影のポイント
- 塗装面積に対して、必要な塗料量が適切かどうかを確認し、過不足がないか証拠を残す。
- 膜厚が基準より薄いと、劣化が早まり剥がれやすくなるため、膜厚計で測定し記録する。
- 施工前・施工中・施工後の3段階で写真を残すことで、施工プロセスの証明ができる。
これらの写真を確実に撮影しておけば、施工後のトラブル時にも、適切な施工が行われたことを証明できます。
鉄筋の写真撮影
鉄筋工事では、「コンクリートで埋められる前の状態」 を記録することが重要です。
施工後に確認できなくなるため、設計図通りに施工されていることを証明するための写真を残しましょう。
必要な写真
- 配筋前の基礎状況
基礎の清掃状況や、防湿シート・型枠の設置状況を撮影。 - 配筋完了時の全体写真
設計図通りの鉄筋配置になっているか、広角で撮影。 - 鉄筋の寸法・間隔の記録
スケールを当てて、鉄筋の太さやピッチ(間隔)が基準通りであることを示す。 - 継手や補強筋の施工状況
継手の重ね長さや補強筋の配置を詳細に撮影。 - コンクリート打設前の最終確認写真
配筋がしっかり固定されているかを撮影し、施工後の不具合を防ぐ。
撮影のポイント
- スケールを当てて撮影し、寸法が明確に分かるようにする。
- 配筋写真は広角とアップの両方を撮ることで、全体の配置と細部の詳細を記録する。
- コンクリートを打設すると隠れてしまう部分は、必ず写真で残すことが鉄則。
後から鉄筋配置を確認できるよう、適切な写真を残すことで、施工の正確性を証明し、品質管理の強化につながります。
「ルール」を理解して、迷わず撮影しよう
工事写真を撮る最大の目的は、正しく施工された証拠を残すこと です。
これは単なる記録ではなく、「現場で適切に作業を行った」という明確な証明になります。
そのためには、「設計図」「使用書」「施工計画書」の基準に沿って撮影することが不可欠です。
「どこまで撮るべきか?」と迷ったら、これらの書類を確認し、指示に従って記録を残しましょう。
特に、コンクリートに埋まる鉄筋や塗装の膜厚など、後から確認できなくなる部分は必ず撮影することが鉄則。確実な証拠を残すことで、施工の品質を証明し、トラブルを未然に防ぐことができます。
適切なルールを押さえれば、「撮り忘れ」や「撮りすぎ」に悩むことはなくなります。
現場の基準を意識し、必要な写真を的確に撮影できるスキルを身につけましょう。

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