成功する施工管理者とそうでない者を分けるのは、目標を達成するための逆算思考のスキルです。本記事では、この決定的なスキルを身に付け、どの職種においても成果を上げる「できる人」に変わる方法を明らかにします。
「できる人」に共通するのは、最終目的を達成するために必要なステップを逆に辿る能力です。逆算思考を駆使することで、目標設定から達成までの道のりが明確になり、成功への道筋を確実に描けるようになります。
それでは、成功する施工管理者とそうでない者の間にある微妙な差と、それをどのように埋めるかについて掘り下げていきましょう。
株式会社 RaisePLAN 代表取締役
武田 祐樹(たけだ ひろき)
【これまでの活動】
- 総合建設業で施工管理として17年勤務後、独立起業。
- 建設現場の生産性向上と施工管理の教育支援を展開。
- 中小企業庁「デジタル化応援隊事業」のIT専門家。
- YouTubeチャンネル『建設業を持ち上げるTV』を運営し、登録者1.2万人を獲得。教育特化長尺動画が8万回再生を突破。
- Instagramや音声配信など多メディアで情報発信。
- 電子書籍出版やオンラインセミナーを精力的に実施。
- 2023年3月、AbemaPrime出演で現場効率化施策が注目。
記事の監修

できる人とできない人の違いについての事例

できる人とできない人は考え方のスタート地点から違います。
できない人はスタートから始まります。
できる人はゴールから始まります。
つまり、一番最初に抑えなければいけない考え方はゴール地点がどこかということになります。
これを具体的な話として3つ事例をお話します。
事例1:書類を3日後までにまとめてほしいと指示された時
できない君のケース
できない君は、とにかく目の前の仕事に手をつけることから始めます。
資料を片っ端からまとめようとし、一つひとつ順番に片付ける「階段を上る」方式で進めます。ですが、これでは全体を見渡す余裕がなく、次のような展開になりがちです。
1日目:何となくやり方を掴みながら進めるが、仕事全体の方向性はぼんやりしたまま終了。
2日目:同じペースで作業を進めるが、まだ半分も終わらない状態で終了。
3日目:焦りながら作業を続け、なんとか半分以上を完成させるものの、残りの部分は手付かずのまま。
結果、上司に報告せざるを得なくなり、残りの作業量に絶望します。最終的に全体の一部が欠けた状態で仕事が終わらないまま時間切れ。このように、全体像を意識せず進めるやり方では、時間が足りずにミスや漏れが生じやすいのです。
できる君のケース
一方、できる君は作業に取り掛かる前に、まずゴール地点を見据えます。
全体の仕事量を把握し、どこまでを最低限仕上げるべきか、上司の確認に間に合うスケジュールを逆算して考えます。
たとえば、ゴールまでに必要な時間が3日間ある場合、こう計画を立てます。
- 半日前には上司に渡す → 実質の作業時間は2日半。
- 資料の読み込み:1日 → 内容を把握し整理。
- 資料のまとめ:1日半 → 資料を具体的に形にする。
このように時間を割り振ることで、1日のどの段階で何を終わらせるかを明確にします。そして実際の作業も段階的に進めていきます。
1日目:資料全体にざっと目を通し、大まかな内容を把握。さらに、重要な部分をメモしながら詳細を整理。
2日目:メモを元に資料をまとめ、形を整える。
3日目午前:全体を見直し、見やすくブラッシュアップ。
3日目午後:上司に提出し、フィードバックをもとに最終修正。
結果、完璧ではないものの全体が仕上がり、上司と調整してさらに完成度を高めることができます。
「できない君」と「できる君」の違い
できない君は目の前の作業に集中しすぎるあまり、全体を見渡せず、時間配分がずさんになりがちです。結果的に、仕事の一部が手付かずになってしまいます。
一方、できる君はゴールから逆算して計画を立てることで、全体を底上げする作業を進めます。完璧でなくとも、全体のバランスが取れた成果物を仕上げることができるのです。
この違いは「スタートから始めるか、ゴールから考えるか」にあります。できない君が「今を優先」して動くのに対し、できる君は「未来を想定」して動いているのです。
事例2:仕事でアイディアを出さなければいけない時
できない君のケース
できない君は、まず「自分が何を使えるか」を考えるところからスタートします。
たとえば、「この道具なら使えそうだ」「このやり方でいけるかもしれない」といった具合に、道具や手法を中心にアイデアを振り絞り、それで進めていく方向性を決めます。
しかし、この方法には落とし穴があります。道具や手法を決めるだけでゴールが具体的に見えていないため、進んだ先に何が待っているのかが不明瞭です。そのため、途中で「このやり方では無理だ」と気づいた時には、また最初に戻って別の方法を探さなければなりません。
結果、行き当たりばったりで時間を無駄にしてしまい、ゴールにたどり着けるかどうかが不確実になってしまいます。
できる君のケース
一方、できる君は最初に「ゴール地点」をはっきりと定めることから始めます。
「最終的にどうなっていれば良いのか」を考え、そのゴールに到達するために最適なルートを選ぶことを意識します。
たとえば、「複数の選択肢がある中で、どれが一番効率的か」「どの道具が一番役に立つか」をゴールから逆算して判断します。もし途中でうまくいかなくても、ゴールは明確なので別の選択肢を試せば良いのです。これにより、道に迷ったり、最初からやり直す必要がありません。
また、ゴールが決まっている分、自由な発想で選択肢を探せるため、考え方に柔軟性が生まれ、仕事に幅と余裕を持たせることができます。
できない君とできる君の違い
できない君は、「道具や手法」にこだわり、それをどう使うかを考えるスタート地点から動きます。このため、途中でつまずくと振り出しに戻るリスクがあります。ゴールが曖昧なため、方向性を見失いがちです。
一方でできる君は、「ゴールを決めること」を最優先に考えます。ゴールへの道筋が複数あっても、どれを選んでもゴールにたどり着けるという考えを持っているため、柔軟に最適な方法を見つけることができます。
事例3:彼女と旅行をする時
できない君の場合
できない君の旅行プランは、まず移動手段を決めることから始まります。
「車があるから、移動は車で行こう」「2~3時間のドライブが疲れない距離だから、その範囲内で何ができるか探そう」と考えます。そして、その範囲内で楽しめそうなスポットやアクティビティを調べ、そこから旅行の計画を組み立てます。
一見、順調そうに見えるこの方法ですが、移動手段や時間制限を最初に決めてしまうため、選べる選択肢が限られてしまいます。「ここに行きたい」「これがやりたい」という大きな目的がないまま、時間と条件に縛られた計画になりがちです。
できる君の場合
一方、できる君は「何をしたいか」を最初に決めることからスタートします。
たとえば、「○○の絶景スポットに行きたい」「美味しい海鮮料理を食べたい」「温泉でのんびりしたい」といったゴールをはっきりさせます。そして、それを実現するために必要な移動手段やスケジュールを考えていくのです。
ゴールを先に決めているため、移動手段やプランニングの自由度が高くなります。もし車では時間が足りないなら電車や飛行機を検討するなど、柔軟に選択肢を広げられるのです。これにより、目的に合った充実した旅行が実現します。
できない君とできる君の違い
できない君は、「移動手段」や「制限」からプランを考えます。結果、選択肢が最初から狭まってしまい、目的がぼやけた計画になりやすいです。
一方でできる君は、「ゴール=目的」を先に決めてから方法を考えます。これにより選択肢を柔軟に広げられ、理想に近いプランを実現できます。
できる人になるためには、逆算思考を身につけよう

この記事でお伝えした3つの事例から明らかなように、「できる人」と「できない人」を分けるのは、ゴールから逆算して考える力です。逆算思考を身につけることで、どんな課題やシチュエーションにも柔軟に対応し、最適な結果を導き出すことができます。
逆算思考がもたらす3つのメリット
- 全体像が見える
ゴールを明確に設定することで、必要なステップが自然と浮かび上がります。これにより、時間配分や優先順位を的確に決められるようになります。 - 選択肢が広がる
ゴールを起点にすると、そこにたどり着くための方法は無数にあることが分かります。柔軟な発想で最適なルートを選び出せるようになります。 - 効率的に進められる
逆算思考は、無駄を省いて最短でゴールに到達する方法を導きます。途中でつまずいても、ゴールがはっきりしているため、すぐに修正が可能です。
「できる人」になるための3ステップ
- ゴールを明確にする
まずは「何を達成したいか」を具体的に定めましょう。仕事であれば成果物や納期、旅行であれば行きたい場所や体験したいことをリストアップします。 - 必要な手順を逆算する
ゴールを達成するために何が必要かを順番に考えます。上司に確認するタイミングや準備する時間を含めて、細かく計画を立てましょう。 - 最適な行動を選択する
ゴールに向かうための複数の選択肢を検討し、状況に合った最善の方法を選びます。途中で計画が変わっても、ゴールが明確であればすぐに軌道修正できます。
今日からできる逆算思考の練習
日常の小さなタスクから逆算思考を取り入れてみましょう。たとえば、家事、買い物、プライベートの予定でも、ゴールを意識して「そこに到達するための最適なステップは何か」を考える癖をつけてください。
逆算思考は、あなたの時間やエネルギーを有効活用し、より充実した成果を手に入れるための力強いツールです。仕事でもプライベートでも、あなたの行動に自信と確信をもたらしてくれるはずです。
まとめ
成功する施工管理者に必要なのは、目標達成のための逆算思考です。このスキルを身につければ、限られた時間やリソースの中で最大限の成果を上げることができるようになります。逆算思考の本質は、「ゴールを明確に設定し、そこに至る最適な道筋を計画すること」にあります。
施工管理の現場では、ただ目の前のタスクをこなすだけでは成果を上げることは難しいものです。全体の流れを見渡し、チームやスケジュールと連携しながら効率よく進める必要があります。逆算思考を取り入れることで、次のようなメリットを得ることができます。
- 全体像が見える:ゴールから考えることで、必要なタスクが明確になり、優先順位をつけやすくなります。
- 柔軟性が高まる:複数の選択肢を比較し、状況に応じた最適な方法を選べるようになります。
- 効率が上がる:無駄な動きを減らし、目標達成までの道筋をスムーズに進むことができます。
逆算思考は一度身につければ、施工管理だけでなく、どのような業務や生活の場面でも活用できるスキルです。最初は難しく感じるかもしれませんが、小さなタスクから「ゴールを意識して逆算する」習慣を取り入れることで、確実に成果を実感できるでしょう。
あなたの未来は、あなた自身の手で作り上げるものです。今この瞬間から一歩を踏み出し、逆算思考を駆使して「できる施工管理者」へと成長していきましょう!

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