『一般管理費』って何なの?分かりやすく教えてほしい。
このようなお悩みに答えていきます。
一般管理費と聞いてピンとこない方も多いかと思いますが、本記事ではその意味や役割を解説し、見積書における一般管理費の項目についても詳しく説明します。
見積もりを作成する際に、一般管理費という項目は非常に重要です。しかし、その具体的な意味や内容が分からないままでは、適切な見積もりを提供することが難しいこともあります。
また、一般管理費に対する誤解も存在します。一部の人はこれを「会社の利益」と捉えていることもありますが、それは正確ではありません。
本記事では、一般管理費が何を指すのか、その役割と重要性、そして見積書においてどのように表記されるかなどをわかりやすく説明していきます。一般管理費についての理解を深め、見積もりの作成やプロジェクト管理に役立てていただければ幸いです。
この記事を書いた人
株式会社 RaisePLAN 代表取締役
武田 祐樹(たけだ ひろき)
【これまでの活動】
- 総合建設業に17年在職後、独立起業。
- 建設現場の生産性向上支援や施工管理の教育支援を展開。
- 中小企業デジタル化応援隊事業(中小企業庁)のIT専門家。
- YouTubeや音声配信、Instagram・メールマガジンなどで情報発信を行い、電子書籍の出版やオンライン講師、オンラインセミナー活動に積極的に取り組む。
- 建設業の現場効率化の仕掛け人としてAbemaPrimeに出演(2023年3月)。
見積書について
まず、見積書の構成についてお話ししましょう。
見積書はプロジェクトの費用を詳細に示す文書で、正確な見積もりを提供するために重要な役割を果たします。見積書は一連の項目やカテゴリーで構成されており、その中で「一般管理費」に焦点を当てて説明します。
まず、見積書の構成は以下のようになります。
- 共通仮設工事費(または共通仮設費、共通費)
- 建設工事費
- 建設主体工事費
- 電気設備工事費
- 工事機械設備工事費
- 外構工事費
- 現場管理費
- 一般管理費
このように見積書は項目ごとに区切られており、各項目にはプロジェクトに関連する費用が詳細に記載されます。そして、一般管理費は「現場管理費」の下に位置しています。
今回は一般管理費に焦点を当て、その意味や役割について詳しく説明します。一般管理費がプロジェクトにおいてどのような役割を果たすのか、具体的な内容について解説します。
共通仮設工事費について
共通仮設工事費と直接仮設工事費の違いを詳しく解説します。
共通仮設工事費
共通仮設工事費は、工事を運営する際に必要な仮設設備や物品の費用を指します。しかし、竣工した時点でこれらの仮設物は不要になり、撤去されるものです。共通仮設工事費の「共通」は、これらの仮設が現場全体に共通して使用されることを示しています。具体的には、職員全員が必ず利用する設備や、基本的に使用しなければならないものが該当します。
例えば、現場を取り囲む仮囲いは、全ての作業員が安全に仕事を行うために必要なものであり、共通仮設工事費に含まれます。また、共同で使用するトイレや現場事務所、安全対策のための設備、雑費、さまざまな資材を購入する際の費用も、共通仮設工事費に含まれます。共通仮設工事費は、現場全体で必要とされる設備や物品に関連する費用をまとめたものです。
直接仮設工事費
直接仮設工事費は、特定の工種や職種に直接関連する仮設費用を指します。直接仮設工事費は、特定の業者や工種に対して必要なもので、他の業者や作業員には直接関係ありません。このカテゴリーに含まれる費用は、特定の工事に必要な設備や物品に関連しています。
たとえば、外壁工事の業者が使用する外部足場は、直接仮設工事費に含まれます。高所作業車やクレーンなどの設備も、特定の作業に必要な場合に直接仮設工事費として計上されます。このように、直接仮設工事費は、特定の工種や業者に対して直接に必要な仮設に関連する費用を示します。
現場管理費について
現場管理費とは、共通仮設工事の現場を円滑に運営し、管理するために必要な経費の一部を指します。別名、現場経費とも呼ばれ、その本質は経費であると言えます。
この現場管理費は、主に現場職員や現場監督が利用するための費用を包括しています。具体的には、現場職員が現場での作業に従事するために支給される給料や、必要な作業着、ヘルメット、安全靴などの被服費が含まれます。
また、現場事務所内で使用される備品や設備も現場管理費の一部とされます。例えば、コピー機やパソコン、ネットワークの維持費用は、通常、現場職員や監督が業務遂行に必要なものであり、そのための経費として計上されます。
さらに、この現場管理費には、現場管理者が業務遂行上必要とする費用も含まれています。これには、お客様との会食などの交際費も含まれます。
要するに、現場管理費は、現場運営において不可欠な支出をまとめたものであり、これらの費用は工事プロジェクトの円滑な進行と適切な管理に欠かせないものとなります。
一般管理費について
一般管理費についての理解を深めましょう。
一般管理費という言葉の「一般」は、一般的な物事という意味ではなく、現場を運営する側、つまり現場監督側にとっての「一般」を指します。言い換えれば、一般管理費は、直接的な工事には直結しないが、プロジェクト全体を運営し維持するために必要な費用を示しています。
この一般管理費は、利益とも捉えることができますし、利益とは別に考えることもできます。その境界線は曖昧で、理解するのが難しい側面もあります。
具体的に、業者、下請け業者、協力業者からの請求書を受け取り、それをまとめて最終的に支払いを行う業務を考えてみましょう。この業務は、現場で直接の作業を行う職員には関連しないかもしれませんが、彼らや彼女らなしでは、プロジェクト全体は成り立ちません。
私たちが一年間働くために必要な事務作業は、現場運営には直接関係がないかもしれませんが、彼らがいなければ私たちは存在することができません。そのため、彼らの運営費、会社の運営費は必要不可欠です。彼ら、彼女らは、利益を直接生み出す立場にはいないかもしれませんが、会社全体を維持し、運営するために重要な役割を果たしています。
現場を運営し、プロジェクトを成功させるために必要な経費、コピー機や文房具なども、会社の存続と運営に必要なものとしてお客様に請求されるものです。これが一般管理費の中に含まれる内容です。一般管理費は、会社自体を維持し、プロジェクトを遂行するために不可欠な要素であり、理解しておくことは重要です。
一般管理費の作り方
一般管理費の計算方法とその重要性について説明します。
一般管理費の計算方法
一般管理費は、プロジェクトの全体金額が確定した後、特定のパーセンテージとして加えられる費用です。一般的に、積み上げ方式の見積もりではなく、最終的に全体の金額から何パーセントかを計算するのが基本的なルールとなっています。
パーセンテージの決定
このパーセンテージは、会社ごとに異なります。そして、このパーセンテージは主に過去の経験値に基づいて算出されます。
例:ある会社で10人の事務員が働いており、その年間給料の合計が4000万円とします。同じ会社が年間で10億円の工事を行い、利益が1億円だったとします。この場合、その4000万円は運営費として必要な金額です。この金額をパーセンテージで表すと、10億円の4%にあたります。この4%が一般管理費として請求される金額となります。
一般管理費のパーセンテージは、会社が過去にどれだけの経験を持っているか、どれくらいの運営費がかかっているかなどの経験値に基づいています。そのため、会社によっては異なるパーセンテージが適用されることがあります。
一般管理費を下げるリクエストについて
多くのクライアントが一般管理費を下げてくれるよう交渉することがありますが、これを一概に下げることは企業の運営を危うくする可能性があります。結果として、企業が破綻するリスクが高まります。これは、クライアントにとっても好ましくない状況を生む可能性があります。
まとめ
このように、数字や金額を扱う際には、その背後にある意味を深く理解し、自分の中で咀嚼(そしゃく)することが非常に重要です。ただ単に数字を振りかざすのではなく、その数字がどのように計算され、設定されたのかを理解し、それを根拠に自信を持って発言することが大切です。
項目ごとに意味を持たせることは、信頼性を築く上で不可欠です。無意味な金額をお客さんに請求することは、信頼を損なうだけでなく、長期的なビジネスにおいては致命的な影響を及ぼす可能性があります。お客さんは、誠実さと透明性を重視し、そのようなビジネスからは距離を置く傾向があります。
もしも理解できない点や疑問がある場合は、恐れずに質問し、必要な情報を何度でも確認しましょう。そして、自分の中で納得がいくまで見直し、腑に落ちるまで考え抜きましょう。それが、信頼を築き、成功を収めるための一歩となります。
数字と意味を結びつけ、誠実なビジネス態度を持ち続けることで、長期的な成功と信用の確立が可能となります。自信を持って、意味ある数字を活用し、信頼を築いていきましょう。
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