施工管理は、私の知る中でかなり難易度の高い職業と言えます。
しかし。医者や弁護士のように高い学力が必要なわけでも、デザイナーや陶芸家のようにセンスや技が必要なわけでもありません。

じゃあ、なぜ難易度が高いの?
戦う相手が、すべて「人間」だからです。命令すれば必ずいうことの聞く、ロボットや生産機械とは話が違います。コツコツ進んでいけば必ず結果が出る、プログラミングとも違います。
昨日よかったことも、今日になれば答えが変わる。お礼を言わないだけで仕事ができなくなる。そんな理不尽ともいえる「人間味」を相手に仕事をしているのです。
出入りする何千もの人が、それぞれに個体差があり、その全員がもれなく何かの世界のプロ。一癖も二癖もある人間ばかり。所長然り、先輩然り、職人然り、設計然り。もちろん施主だって例外ではなく、そもそも億単位の買い物をする組織の人間です。癖がないわけがありません。
そんな人たちを相手に、若くして対等にやりあうのは常識的に考えて無理があるわけです。
本記事では「施工管理 辞めたい」と考えている人にぜひ読んでもらいたいメッセージを記載しました。私の経験から言えることを包み隠さずお伝えします。
施工管理は難易度の高い職業だと自覚してください
改めて言いますが、施工管理という仕事自体、難易度の高さに関しては全業種トップクラスだと私は考えています。そしてこの業界を生き抜いてきた先輩上司は、いわば「化け物」。相当の強者たちだと言えるのです。
きっと辞めたいと思っているあなたは、「仕事量が多い」もしくは「人間関係がうまくいかない」のどちらかではないでしょうか。
それはつまり、言い換えるとこういうことになります。
- 何千人の癖のあるプロ集団を相手に闘うことが辛い
- 業界の生んだ化け物相手に、うまくいかないと感じている
このように、施工管理とはそもそもものすごく難しい職業に就いたということを自覚してください。
あなたがこの業界で、どのぐらいの期間頑張ってきたのかはわかりません。今まで努力しもがいてきたあなたが「辞めたい」と感じることに関して、誰も止めることはできませんし、否定することもできません。
ただ、ほんの少しでも「本当は残っていたい」という気持ちがあるのなら、このまま読み進めてみてください。建設業を愛し、長い間携わってきた私が言えることをお伝えします。
施工管理は人間を相手にする職業だから明確な答えがなく難しいのです。そして周りの人は皆、そんな環境を潜り抜けてきた癖の強い猛者たちだと言いました。要するに、超ハイクラスの職業において、正解のない業界にあなたは喧嘩を売ったのです。
その環境で少しの間見てきた世界はどうでしたか?「とてもかなわない」と感じたのではありませんか?
そんなあなたに、まず伝えたいことは【僕も同じだった】ということです。
戦う相手が大きく、それが当たり前という不可解な環境に身を投じた結果、まるで自分が小さいかのように感じてしまっています。頑張っても頑張っても報われない状況。だから嫌になってきた。そうじゃないでしょうか。
少なくとも僕はそう感じていました。
- 必死で努力をしても、夢中でくらいついていっても、先輩の背中は遠い。
- いつまでたっても偉そうなことばかり言われる。
- どんなに知識を付けても知らないことが多すぎる。
そんな状況で、自信が身につくはずもありません。絶望した時期もありました。
しかし、僕は打開することができました。戦う相手が人間だということに気付いたからです。
人間って本当にめんどくさいですよね。自分よりも幼い人間には負けたくないという気持ちを持っています。あなたもきっとそうでしょう。
例えば先輩である僕が、後輩のあなたに負けないでい続ける方法として、最も有効な作戦は何だと思いますか?それは簡単。「負けない仕事しかさせないこと」です。
相手が勝てない土俵に上げてしまえば、自分はいつまでも偉くいられます。だから、あなたに与えるものは「絶対に負けない部分」の仕事ばかりにすればいい。これであなたは絶対に勝てないと感じる構図が出来上がります。
また、追いつけないもう1つの理由は、相手が人間である以上「先輩も成長している」ことです。自分と同じ速度で先輩も成長していれば、進んでも進んでも追いつけない夕日のような関係性になります。
以上二つの理由により、あなたは先輩に追いつくことはなく、先輩はいつまでも偉そうだということになります。ただこれは自然なことであり、どこでも起こっている状況。建設業だから特別ということではありません。
あなたは自分が成長していないと勘違いしていませんか?


ちょっと力を抜いてみてください。繰り返しになりますが、相手は歴戦の猛者たちです。そんな人達ばかりの中で、あなたは今まで生きてきたわけです。
あなたは、本当に成長していないんでしょうか?
人の成長速度は、周囲の環境によって大きく変わると言われています。
例えば、年収500万円を目指している人にとって、きっとそこに至るまでの道のりは簡単ではないことでしょう。きっと500万円に到達したときには「やった!」となりますよね。
もし、年収1億円を目指して努力をしていたとしたらどうでしょうか。500万円の年収になった時に、「たった500万円かよ・・・」と残念に感じると思いませんか?
もしかしたらあなたは今、そんな状況にいるのかもしれません。
私がそうでした。ある瞬間にそれに気付くことができ、一気に肩の荷が下りました。
ある時、母から「最近仕事どうなの?」と聞かれ、「どうせ言ったってわかんないだろ」と突き返したんです。その時ふと思いました。
「どうせ言ったってわからない」と母に対して感じた自分がいる。でも、たった数年前までは彼女と同じ建築のことなんて全然わからない「ド素人」だったはずなのです。
にもかかわらず、母に対して「どうせ言ったってわからない」ところまで、自分は進んできたんだということに気付いたのです。同時に、わからないと言っている人を邪険にあつかった構造はまさに、先輩が自分にしていることそのものだったことに気づきました。
建設業を生き抜いてきた猛者である先輩たちの背中を見て追いつかないように感じていた自分も、実は成長していたんです。この間まで隣にいたはずの母を置き去りにしていることからもわかります。
施工管理歴17年の僕からのアドバイス
理解してほしいことがあります。今までの仕事人生はまったく無駄だったわけではないということです。先輩や上司についていこうと必死になった結果、しっかりと成長していたのです。
ただ一点、それを感じる暇もないくらい、心に余裕がなかっただけなのです。
だから私からのアドバイスはこうです。
自分の実力もスキルもポジションも、何もわからないまま違う業界に行ったのなら、今までの時間はドブに捨てるのと同じになります。きっと「ゼロ」からのやり直しになるでしょう。そこには引け目も感じると思います。でももし、知らず知らずに何かスキルが手に入っていたのであれば、それはきっとあなたの力になるはずです。
人間である以上、少しでも時間がたてば、何かしらの経験をしています。それがどんな辛いものであれ、それはあなたの未来を助けるべき力になり得ます。ここまで上を見続けて努力し、前を見続けてくらいついてきたのであれば。少しの間でいいので下を見てみましょう。後ろをついてきている後輩も見てみましょう。
後輩には、あなたの知っていることを教えてあげてください。愚痴ではなく、後輩の成長につながる話をしてあげてください。
もしくは、周囲の誰でもいいから業界の話を思いっきりしてみましょう。前向きな話をしてみてください。
そうすれば、きっと自分の能力が見えてきます。自分はどこまでわかってて、そして今どのポジションにいるのか。どんなスキルが身についていて、何が足りていないのか。
それを理解した上で、改めて考えてみることはできないでしょうか。本当に辞めるべきか。もう少しだけ頑張ってみるのか。時間のかかることではありません。
無理にとも言いませんが、あなたの積み上げてきたこれまでに対して少しもったいなく感じているだけです。
施工管理は人相手の仕事。だから大変だし、面白い。
結局僕ら施工管理は人と人をつなぐ職業です。戦う相手は建物なんかじゃなく、すべて人。そしてあなたもその中の一人です。このまま進むことになれば、いつかきっと癖の強い側の人になります。
私たちは建物なんて建てていません。誰かに建ててもらってなんぼの世界を生きているのです。
施工管理には明確な商品といえるものはなく、不明確な「人間味」を相手にしているから、答えがない。だから自分なりの答えを探し、自分の意志で決断していく。つまり答えはいつも、人によるわけです。言ってしまえば、癖がないと生きていけない業界なのです。
ゆえに、一つ一つ答えを出さなければならず、ゴールが明確にあるわけでもない。不確かな世界なのです。そんな独特な環境から、逃げることはできません。現場が変わるごとに、その都度新しい人間関係も作らなければいけません。しかも、上についた所長の考え一つで、現場の難易度がガラッと変わる。やってきたこと全てが無になってしまうこともあります。
そんな理不尽極まりない世界は僕の知る限り他にはありません。ただ、もしも上に立つことができれば、好き放題できるのも事実。理不尽とは、相手があってのこと。あなたが上に立てば、あなたこそが「理不尽」となるのです。まさに好き放題です。
辞める前に、まずは自分の立ち位置を確認してみましょう。今まで見えていなかった部分が見えることになれば、違った世界が広がるかもしれません。
せっかくここまで踏ん張ったなら、自分の軌跡を見返してみましょう。
そこでもし、建設業に残る決断をしたのなら、いつでも連絡をください。できる範囲で、あなたの力になります。一筋縄ではいかないけれど捨てたもんじゃない建設業を誰もがワクワクする業界に造り変えてしまいましょう。
とは言え、まずは少しだけ肩の力を抜いてみてください。話はそれから。



