本記事では「現場監督の実態噂と真実」の後編をお届けします。もしまだ前編をご覧になっていない方は、先にそちらをご覧いただいた方が話がわかりやすいかもしれません。
(※この内容は2021年の建設業界の内容になります)
最近、現場監督に関する批判的な動画や意見が増えています。その中には、「現場監督はやばい」「やめたほうがいい」といったネガティブな意見もあります。これらの動画は再生回数も多く、注目を集めているようです。
私自身、以前まで現場監督として働いていた経験があり、すぐに話せることもあるため、現場監督を目指す人たちに少しでも参考になればと思い、この内容をお伝えしています。
現場監督についての批判や闇とされる部分を取り上げ、現在の実情をお話しすることで、噂と真実についてお伝えできればと思いますので、ぜひ最後までお付き合いいただけたらと思います。
株式会社 RaisePLAN 代表取締役
武田 祐樹(たけだ ひろき)
【これまでの活動】
- 総合建設業に17年在職後、独立起業。
- 建設現場の生産性向上支援や施工管理の教育支援を展開。
- 中小企業デジタル化応援隊事業(中小企業庁)のIT専門家。
- YouTubeや音声配信、Instagramなどで情報発信を行い、電子書籍の出版やオンライン講師、オンラインセミナー活動に積極的に取り組む。
- 建設業の現場効率化の仕掛け人としてAbemaPrimeに出演(2023年3月)。
癖のある職人が多い
クセのある職人が多いというのは本当です。職人さんというのは一般的に使われている言葉と微妙に違う専門的な言葉を使っています。
また、建設業とのコラボレーションによって生まれた言葉もあるため、独特な空気感を持っている人たちが多いです。特に年配の職人さんはその鉛みたいなものが非常に強いです。初めての人にとっては言葉遣いや口調が分からなくて戸惑うこともありますが、実際は面倒見が良く、教えてくれる人が多いです。
職人さんにはクセがあると感じられる人もいますが、それが職人さんの特徴の一つであり、チームとして仕事を進めるための関係性を築いていく重要な要素でもあります。
声がデカいやつが強い
これは多分本当ですね。声がデカいやつにみんなついていくという風な感じがあります。
職人さんの上下関係はまだはっきりとしている部分が多いため、声が大きいと指示を出すために必要な要素です。また、声が大きく言えるということは自信があるという意味もあります。自信を持って仕事に取り組むためにも、声を大きく出すことは重要です。
ただし、声の大きさだけで強いとは限りません。実際には声が大きい人たちでも優しい面倒見の良い人が多いです。若い職人さんになるほど、モラルや働き方も少しずつ変わってきているようですが、まとめると、声の大きさは一つの要素であり、人によってその影響は異なると言えます。
いきなり中間管理職
新人が会社に入って最初に中間管理職になる場合、現場監督として指示を出し、チェックする立場になります。現場では上からの指示を受け、職人たちに指示を出さなければなりませんが、指示がうまく伝わらず混乱することもあります。
このような中間管理職のポジションでは、精神的に上からも下からも圧迫されることがあります。ただし、職人からステップアップして現場監督になっていく流れを経験していけば、中間管理職の仕事に慣れ、部下を指導するリーダーシップを発揮することができるようになります。
このような中間管理職の仕事は特徴的であり、最初は困難な部分もありますが、慣れてくると面白い仕事だと言えます。入社する際には、中間管理職のポジションの特性を理解し、自身が成長していくことを覚悟した上で受け入れる必要があります。
「自分が作った」と思い込む
噂の話題として、自分が何もしていないのにみんなが自分が作ったと言っているということがあります。これは本当の話です。チームのトップとして、現場が始まる前からお客さんや設計事務所とのやり取りを通じて、職人の配置やプロジェクトの進行方法を考えなければなりません。
成功と失敗、予算の過剰な使い込みや予想外の状況に悩むこともあります。しかし、これらの問題を抱えながらもプロデューサーとして仕事を進めていくことが私たちの役割です。だからこそ、自分がやったと思っても構わないのです。
ただし、この話を考える上で、「自分が作った」と言っている人の意見として、実際に釘を打ったり鉄筋を組んだりしていないのに「自分が作った」と言うのはおかしいというものもあります。私たちのような仕事では、自分で建物の設計やプロデュースを行っているわけではありません。しかし、例えば野球の監督が試合に勝ったと言うのと同じように、プログラミングで自分が打ったコードが正常に動くのは、自分の仕事の成果と言えます。
このような議論は抽象的かもしれませんが、少なくとも私たちの仕事では、自分で全てをプロデュースし、人々を指導し、安全を確保し、利益を出すことが求められます。私たちの仕事に誇りを持って、自分がやり遂げたと言っても遠慮する必要はありません。もちろん、自分が作ったと言い続けることは、幸せを感じるためのものです。自信を持って、世の中の建物を監督たちが作ったと言ってほしいと思います。
建築の世界において、私たちの存在は目に見えない部分も多いかもしれませんが、私たちはその裏方として、建物を創り上げるために全力を尽くしています。皆さんが快適な空間で生活し、働くことができるのは、私たち建築プロフェッショナルのおかげです。誇りを持って、建物を監督した私たちの存在を肯定しましょう。
勉強が難しすぎる
これについては本当です。仕事内容としてもかなりハードですし、仕事の休みも少なく、夜遅くまで働かなければならない場面もあります。その中でさらに勉強時間を確保して資格を取ることは、無理だと思われるかもしれませんが、実際に取得している人もたくさんいます。勉強時間を作り出すためには、創意工夫が必要です。勉強しないで資格を取ることはできないので、勉強をしなければ価値がないと思います。
私自身も仕事をしながら一級建築士や一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士の資格を取得しました。これは仕事をサボって取ったわけではなく、時間をどうやって作れるかを工夫しながら前進してきた結果です。勉強しないで資格を取らなかった人もたくさんいますが、取ったもの勝ちですし、それをやり遂げることに価値があると思います。一つ踏ん張ってやってやっと取ることが大切だと感じます。
簡単に言えば、嫌なら簡単な仕事に切り替えればいいと思います。私見ですが、建築に関しては深い知識が必要であり、やるべきこともたくさんあります。知らなくていいことはありませんが、その分やりがいもあります。もし嫌なら、現場監督ではなく別の仕事を選んだ方がいいかもしれません。コンビニのレジ打ちのような仕事は、短期間でほぼ完全にマスターできるでしょう。もしそれが嫌なら、それに向いているかもしれません。私は挑戦し、頑張ってきた経験があります。
責任が重すぎる
ここについては本当です。現場監督の仕事は、具体的に建物を建てるわけではなく、知識や指導力を活かす役割です。しかし、私たちの仕事は何かミスや失敗があった時に責任を取ることです。部長など上位の立場であっても、部下のミスに対して責任を取るために上にいる存在です。現場で何か問題が起きた時に責任を取る仕事だからこそ、私たちは雇われている存在となります。
確かに、責任が重いと言われると、何もできなくなるという状況になります。昔よりも今のほうが、お金の余裕も少なくなりました。失敗した場合でもそのお金をかけて補填できた時代は過去のもので、競争が激しくなった結果、お金や時間が限られています。失敗は許されない状況がますます増えていると感じています。
このような意味では、現場監督の責任は重く、現代の状況では厳しいものだと思います。仕組みを変えることもできず、理解していただければと思います。
飲み会が多すぎる
ここからはプライベートの闇として、2つの要点を取り上げましょう。飲み会が多すぎることです。
これに関しては、多分本当です。月に2回以上、私が関わっている会社では、頻繁に飲み会が開催されています。ただし、それは強制ではありません。行くかどうかは自由な選択で、私も行くこともあれば行かないこともあります。強制力はあまり大きくないと思いますが、年に約12回ほどは強制的に参加する必要がある場合もあります。また、お客さんから誘われることもあるので、意見を無視して参加しないということは起こり得ません。立場が上になると、頻度が上がる傾向があるような印象です。
飲み会が好きで、コミュニケーションやお酒を楽しむことが好きな人にとっては、天国のようなものかもしれません。ただし、飲み会が多すぎるという問題もあります。他の会社の状況については断言できません。社風や歴史などが影響している可能性もありますので、一概には言えません。ただ、私の経験から言えば、飲み会が頻繁に開催される傾向があります。
また、一度飲みに行けない状況が続いていると、その後にヘイトを浴びることもありました。常識が変わってくるかもしれませんが、現状では飲み会は多いと感じます。
出会いがない
出会いが少ないという話題ですが、残念ながら本当です。建設業界はまだまだ男性中心の社会であり、出会いが少ない状況です。
男性社会においては、勤務時間が長く休みも少ないため、出会いの機会が確かに限られます。そのため、社内恋愛が一番多いパターンだと思われます。私自身も社内恋愛を経験しましたので、その傾向は理解できます。
ただし、運と現代の若い人たちを見ていくと、うまくやっている人も多くいます。ナンパや合コンなどの方法を活用し、SNSをうまく活用することで出会いの機会を増やしている人たちもいます。やり方次第で、出会いの機会は増えると思います。
また、女性の現場監督の視点からすると、男性ばかりの環境では少し居心地が悪いかもしれません。女性の現場監督が増えれば、そういった悩みも解消される可能性があります。
残業代が出ない
お金の問題について話しましょう。まずは残業代が出ないという点です。
この件については微妙な問題です。何とも言えない状況ですね。確かに残業代が出ないという噂は聞かれます。
労働時間や働き方改革に関する取り組みが進んでいる中で、残業は避けるべきであり、企業名を公表することもあります。しかし、結局のところ、法律上は残業をしていなくても実際にはしているというサービス残業の事例も存在します。また、年俸制という制度では、残業は前提となって給料が設定されていることもあります。
つまり、会社によっては悪いことをするために頑張っているところもありますし、変革を進めようとしている会社も存在します。この問題にはブラックボックスの部分もあり、当たり外れがあると思われます。
昔は過酷な労働条件が武勇視されていましたが、現在は休みがない会社に対しては子供嫌いの感情が出てくる傾向もあります。常識も変わってきているため、改善は進んでいくと思われます。もちろん、まだ黒い噂が存在する会社もあるかもしれませんが、全体的には以前よりも改善されています。
ただし、現場監督の給料は、実際に肉体労働をする職人よりも高い傾向にあります。給料や残業代が出ないことが問題だと感じるのは、どの業界や誰と比べるかによって異なります。上を見れば終わりがなく、下を見れば楽になるという感覚もあります。
私自身の経験から言うと、給料は安くない方だったので、残業代が出るかどうかはあまり気にしたことはありませんでした。仕事が好きだったというのも影響しているかもしれません。ただ、微妙な問題だという印象があります。
所長は不正し放題
所長が不正を行っているという噂ですが、前提として法律によって不正行為は禁止されています。また、所長になるためには会社から信頼されている必要があります。
やろうと思えば不正を行うことは可能であるとしても、法律やモラルによって制約されており、不正行為をする環境ではないでしょう。そのため、実際にはほとんどの所長が不正を行っていないと考えられます。
所長は多額の予算を管理しているため、不正行為の余地があると思われるかもしれません。しかし、所長になることで得られる報酬や信頼を考えれば、不正行為をすることはリスクが高いです。また、不正を行った場合の結果や処罰についても分かりません。
したがって、所長は不正し放題という噂は本当であるかもしれませんが、実際にはほとんどの所長が不正行為を避けていると考えられます。
まとめ
ここまでで、現場監督の噂話についての真実をお伝えしました。職人関係、仕事内容、プライベート、そしてお金にまつわる4つの要素を取り上げ、その裏側に迫りました。
現在の社会は、職人不足やデジタル化の波が押し寄せる時代です。しかし、これから先の未来は明るい兆しを見せています。建設業界は変革を遂げ、ますます発展していくことが予測されます。単価の上昇など、好ましい変化も期待できるでしょう。
建設業界は困難な一面もありますが、その中でやりがいを見つけることができる仕事です。自己成長を望み、挑戦する意欲のある方には、ぜひお勧めしたい職業です。
次回は、私自身が現場監督を辞めてから5ヶ月が経った今ならではの視点から、建設業界についてさらに深く掘り下げたお話をする予定です。お楽しみにお待ちください。