「建設業は義理と人情の世界だ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ベテランの方々には馴染みのある感覚かもしれませんが、若者には受け入れ難い文化かもしれません。効率を重視する若者にとって、義理と人情は古い考え方に映るでしょう。しかし、建設業には義理と人情が欠かせないと私は考えています。他の業界でも重要ですが、特に建設業ではその重要性が際立っています。
今回のテーマは「建設業に義理と人情が必要な理由」についてです。特に、義理と人情では仕事ができないと考える若者に向けてお話ししますので、ぜひ最後までお付き合いください。
この記事を書いた人
株式会社 RaisePLAN 代表取締役
武田 祐樹(たけだ ひろき)
【これまでの活動】
- 総合建設業に17年在職後、独立起業。
- 建設現場の生産性向上支援や施工管理の教育支援を展開。
- 中小企業デジタル化応援隊事業(中小企業庁)のIT専門家。
- YouTubeや音声配信、Instagram・メールマガジンなどで情報発信を行い、電子書籍の出版やオンライン講師、オンラインセミナー活動に積極的に取り組む。
- 建設業の現場効率化の仕掛け人としてAbemaPrimeに出演(2023年3月)。
現代ではAIの進化やSNSの発達、インターネットの普及により、コミュニティの幅が広がりました。しかし、その一方で、隣に住んでいる人の顔すら知らないという希薄な人間関係が一般的になっています。「義理と人情が本当に必要なのか」と疑問に思う方も多いでしょう。
私自身、義理と人情が必要な部分とそうでない部分を切り分けて考えることが大切だと思っていますが、建設業においては義理と人情が非常に重要だと感じています。この時代においても、なぜ建設業に義理と人情が必要なのか、その理由を詳しくお話しします。
建設業の特性と他業界との違い
人間が生きていく上で必要なものとして、衣食住の3要素があります。衣は衣服、食は食べ物、住は住む場所やインフラです。これらの要素を考えると、衣服や食べ物は他の場所で生産され、輸送することが可能です。しかし、住む場所だけはそうはいきません。
例えば、アメリカで作られた衣服を日本に輸入して着ることは可能です。食べ物も地元でしか取れないものがありますが、大規模な工場で大量生産し、全国に配送することは可能です。しかし、建設業は現地での作業が不可欠です。生コンクリートは短時間で固まり始めるため、遠くから運ぶことは現実的ではありません。
建設業は現地でしか作れないという性質があるため、働く範囲が限られてきます。地元での仕事が中心となり、コミュニティの大きさが非常に小さい中で仕事を進める必要があります。だからこそ、義理と人情が重要になるのです。
義理と人情の重要性
建設業における義理と人情の具体的な重要性について説明していきます。
信頼関係の重要性とその効果
建設業では、信頼関係が非常に重要です。住宅や建物は大金がかかるため、信頼できる相手としか取引ができません。信頼関係がなければ、顧客は数億円を投資する決断を下せません。また、建設業は土地に密着しているため、コミュニティの範囲が狭くなります。例えば、北海道で仕事をする業者が他の地域で仕事をするのは難しく、地元の職人や材料を知らなければ仕事が進みません。
義理と人情を大切にすることで、信頼関係が築かれます。誰かが助けを必要としているときに手を差し伸べることで、その関係が強化され、次の仕事にもつながります。このような関係性がなければ、仕事を続けることが難しくなります。逆に、義理と人情をしっかり守ることができれば、「あいつ、ちょっと仕事がないらしいぞ」という話が広まり、「じゃあ、うちの仕事を手伝ってもらおうか」という流れで仕事がつながっていきます。狭いコミュニティーだからこそ、息苦しさを感じる人もいるかもしれませんが、人間らしさや温かみを前面に押し出せば、建設業ほど働きやすい場所はないと感じることもできます。
現代における義理と人情の価値
現代ではインターネットが発達し、数限りない人たちと繋がることができます。そのため、「義理人情なんて古い」と感じる方もいるかもしれません。しかし、地場で仕事をする以上、地元の人たちに嫌われた状態で仕事をするのは非常に難しくなります。仕事を発注してもらえなくなると、安ければ良いという問題ではなくなってくるのです。
建設業という業種で働く以上、義理と人情は非常に大切な要素です。職人さんと喧嘩をすれば、その職人さんが来たときに適当な仕事をされてしまう可能性もあります。こう考えると、人間関係を大切にしなければならないことがわかります。受けた恩はどこかで返し、誰かが困っているときは手を貸す。そうすることで、建設業界では生きやすい環境が作れるのです。
反対に、このようなやり取りがうまくできない人は、ストレスを抱えたり、人間関係がうまくいかずに辞めることもあるでしょう。しかし、人間同士のつながりをうまく渡り歩ける人たちは、建設業に非常に向いており、楽しく仕事ができるのです。義理人情は古いという感覚は理解できますが、建設業が建設業である以上、地場で仕事をするためには、義理と人情を大切にしなければならないのです。
まとめ
今回は、建設業において義理と人情がなぜ必要なのかについてお話ししました。地元で仕事を円滑に進めるためには、ギスギスしない環境作りが重要であり、そのためには義理と人情を大切にすることが不可欠です。これを守ることで、建設業界での成功につながります。
義理と人情は単なる古い慣習ではなく、建設業界のビジネスを支える重要な要素です。この価値を理解し、実践することで、建設業界での信頼関係を築き、持続的なビジネスを展開することができるのです。義理と人情を大切にし、より良い建設業界を目指していきましょう。