こんにちは、ライズプランの武田です。
北海道のゼネコンで17年間、建築現場の監督を務めた後、独立して現在は中小建設会社を対象に、現場の業務改善や組織づくりを支援しています。
今、どの現場でも共通する悩みがあります。
- 中堅社員が足りない
- 若手が育たず、定着しない
- 所長が現場を掛け持ちし、疲弊している
- 結果として、受注を増やしたくても人手が回らない
これらの課題を、「人がいないから仕方ない」で片付けていませんか?
実は私も、同じような悩みを持つ現場を多く見てきました。そこで提案したのが、「限られた中堅社員を、複数の現場でシェアして運用する」という考え方。それが、コアエンジニアモデルです。
このモデルを実際の現場で試験導入したところ、1年間で2,117時間(約1人分)の労働時間削減に成功しました。しかも、現場の負担も減り、若手の教育やベテランの知見の活用まで進んだんです。
この記事では、
- なぜこのモデルが機能するのか
- どんな体制で回したのか
- 導入に必要な仕組みやステップ
- どんな効果があったのか
を、具体的な事例を交えてお伝えしていきます。
「現場をどう回すか」に頭を悩ませている方は、きっとヒントになるはずです。
それでは、順を追って説明していきましょう。
株式会社 RaisePLAN 代表取締役
武田 祐樹(たけだ ひろき)
【保持資格】
- 一級建築士
- ー級建築施工管理技士
- 一級土木施工管理技士
【これまでの活動】
- 総合建設業で施工管理として17年勤務後、独立起業。
- 建設現場の生産性向上と施工管理の教育支援を展開。
- 中小企業庁「デジタル化応援隊事業」のIT専門家。
- YouTubeチャンネル『建設業を持ち上げるTV』を運営し、登録者1.2万人を獲得。教育特化長尺動画が8万回再生を突破。
- Instagramや音声配信など多メディアで情報発信。
- 電子書籍出版やオンラインセミナーを精力的に実施。
- 2023年3月、AbemaPrime出演で現場効率化施策が注目。
記事の監修

株式会社 RaisePLAN 代表取締役
武田 祐樹(たけだ ひろき)
【保持資格】
- 一級建築士
- ー級建築施工管理技士
- 一級土木施工管理技士
記事の監修

【これまでの活動】
- 総合建設業で施工管理として17年勤務後、独立起業。
- 建設現場の生産性向上と施工管理の教育支援を展開。
- 中小企業庁「デジタル化応援隊事業」のIT専門家。
- YouTubeチャンネル『建設業を持ち上げるTV』を運営し、登録者1.2万人を獲得。教育特化長尺動画が8万回再生を突破。
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- 2023年3月、AbemaPrime出演で現場効率化施策が注目。
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なぜ今、中堅社員が“いない”ことが深刻なのか?
現在、建設業界が直面している“中堅社員不足”の問題には、明確な背景があります。単なる偶然や一時的な採用難ではありません。いくつかの要因が複合的に絡み合って、今のような状態を生んでいます。
1. 団塊世代の大量退職と若手の減少
まず第一に、長年業界を支えてきた団塊世代やバブル期入社組の大量退職です。60代後半〜70代の技術者が一線から次々と離れています。
一方で、建設業界に新卒で入ってくる若者の数は20年前の約半分以下。高卒者・大卒者のうち、建設業界を目指す層が減っており、そもそも母数が少ない状態です。
つまり、上は抜けるのに、下が入ってこない。この“人材の断絶”が、今の中堅不足の根本にあります。
2. 育成に時間がかかる
仮に若手が入ってきたとしても、中堅に育つまでには最低でも7〜10年はかかります。構造理解、工程計画、安全管理、施工図作成、業者との折衝…単なる現場経験だけでなく、“現場全体をマネジメントする力”が必要です。
しかし現実は、多くの若手が数年で辞めてしまう。理由の多くは、「現場が忙しすぎて、誰も教えてくれない」「何が正解かわからないまま、毎日怒られる」といったものです。
中堅がいないから教育ができず、若手が育たず辞めてしまう。この“負のループ”に、多くの現場が苦しんでいます。
3. 中堅に仕事が集中し、疲弊している
今、各社で最も過酷な立場にあるのが30〜40代の中堅社員です。
- 所長に代わって実務を回す
- 若手の指導も任される
- 現場が足りなければ、2つ3つ掛け持ちも当たり前
「現場は中堅がいないと回らない」という構造の中で、彼らに過剰な負担が集中しています。中には「週休1日以下」「月100時間超の残業」という環境も少なくありません。
当然、こうした働き方に耐えられず、中堅世代自身も離職するケースが後を絶ちません。
「コアエンジニアモデル」とは?
ここまでお読みいただいた方は、きっとこう思ったはずです。
「中堅がいないと現場が回らない。でも育てる時間も人もいない。どうすればいいのか?」
この答えとして、私が実践しているのが「コアエンジニアモデル」です。
これは簡単に言えば、中堅社員を1現場に固定せず、複数の現場を横断的に支援できる形に再配置するという考え方です。
従来の現場体制
一般的な中小ゼネコンの現場では、
- 所長(50代ベテラン):現場全体の責任者。安全管理・品質管理・業者調整などを担う
- 中堅社員(30〜40代):施工図チェック、工程表の作成、若手指導など“実務の核”を担う
- 若手社員(20代):測量補助や書類作成などサポート業務が中心
この3人が基本のワンセット。しかし中堅が足りなければ、そもそも現場そのものが組めないという状態になります。
たとえば、5つの案件があっても中堅が2人しかいなければ、2現場しか受けられない。残り3つの案件は泣く泣く断るか、所長が掛け持ちで疲弊するしかありません。
コアモデルの発想は「分業と支援」
では、こう考えてみてください。
「中堅社員1人が、複数の現場に横断的に関わる」**体制にすれば、どうなるか?
たとえば…
- 所長と若手が現場に常駐し、現場運営を担当
- 中堅社員は現場に常駐せず、自宅や本社から図面チェックや工程管理を実施
- Zoom会議やクラウド共有、ライブカメラなどを活用して状況を把握
- 必要に応じて現場訪問(週1回程度)
これであれば、1人の中堅が2〜4現場を同時にサポートすることも可能になります。つまり、物理的に“いない”はずの人材を、「技術支援」という形で“広く薄く”機能させることができるのです。
なぜ、これが今可能になったのか?
一昔前なら「現場にいない監督なんてムリだ」と言われていたかもしれません。
でも今は、以下のような環境が整ってきました。
- クラウド管理:図面・工程表・写真など、すべてオンラインで共有可能
- ZoomやTeams:進捗確認や打ち合わせは非対面でも問題なし
- 現場用ライブカメラ:現場の動きを常時モニターできる
- 電子承認・電子契約:書類のやりとりも完全ペーパーレス化できる
これらを活用することで、中堅社員は「現場にいなくても現場を回せる」存在になりました。
実際に導入してみた現場の話
試験的に導入した現場は、RC造4階建て、7億円規模のプロジェクト。
- 現場には所長と若手の2名体制
- 中堅社員(私)は週1回現場に行くだけ
- 図面チェックや工程表作成はすべて在宅で対応
この形で回してみた結果、1年間で2,117時間の業務時間を削減できました。
ざっくり言えば、1人分のフルタイム労働がまるまる浮いたということです。

「考える人」と「動く人」を分ける。分業で現場の集中力が戻る
中堅社員が常駐している現場で、こんなことは起きていませんか?
午前中は机に向かって工程表を組んでいたのに、昼前に職人さんから「この納まりでいい?」と呼び出され、午後は役所との打ち合わせで外出。夕方にようやく戻ってきても、朝の続きをやろうとした頃にはもう定時近く。結果、図面チェックは夜になり、集中力も判断力も落ちたまま…。
これが毎日続けば、ミスが出るのも当然です。
コアエンジニアモデルでは、こうした“作業の細切れ化”を防ぐために、中堅社員を現場から外し、「考える業務」に集中させる配置を徹底しています。
中堅社員が担うのは、以下のような「全体を設計し、判断する仕事」です。
- 施工図のチェックと修正依頼
- 工程表の作成・更新
- 発注内容の整備と確認
- 躯体納まりの技術判断
- 協力会社との仕様調整や品質仕様の最終確認
これらは、一つひとつの判断に時間と集中力が必要な業務です。だからこそ、電話や呼び出しに遮られない環境が必要になります。
一方、現場に常駐する所長と若手は、「その日その場の判断が求められる実務」に専念します。
- 職人さんとの段取り調整
- 現場安全の確認と是正指示
- 天候・人員に応じた柔軟な対応
- 顧客や近隣対応などの即時判断
つまり、中堅は「思考と設計」に、所長と若手は「現場の推進と対応」に、それぞれ集中できる体制になります。
この明確な役割分担=分業によって、現場全体の“集中力”が取り戻され、無駄な移動・無意味な中断・ストレスの多いやり取りが激減します。
結果的に、業務の質とスピードの両方が向上し、現場の空気にも余裕が生まれていくのです。
コアエンジニアモデル導入のための、具体的な2ステップ
「この仕組み、うちでも導入できるのかな?」
そう思われた方に向けて、まず取り組んでいただきたいのが、次の2つのステップです。小さな現場からでも実践可能な、再現性の高い方法ですので、ぜひチェックしてみてください。
ステップ1:業務をすべて棚卸しして、やめる仕事を決める
まずは現場や社内で行っている業務をすべて洗い出してみましょう。目の前の仕事に追われていると見過ごしがちですが、よく見ると「本当に今、必要?」というタスクが紛れているものです。
たとえば、
- 書類整理や印刷配布など、紙ベースで行っている業務
- 会議や報告の重複(メール、口頭、チャットなど複数ルート)
- 過去の慣習で続いている朝礼やチェック業務
こうした業務を「必要なもの」「やめられるもの」「誰かに任せられるもの」に仕分けていきます。このプロセスによって、無駄な作業が減るだけでなく、仕事の目的が明確になり、メンバーの意識も変わります。
業務効率化の第一歩は、「減らすこと」です。そのためには、今ある仕事の見える化と、思い切って手放す勇気がカギになります。
ステップ2:現場業務と中堅の技術業務を徹底的に分ける
次に大事なのが、業務の分業体制の構築です。ここでのポイントは、誰がどこまでやるかを曖昧にしないこと。
コアエンジニア(中堅社員)には、現場に出ずに技術的な業務に特化してもらいます。施工図のチェックや工程の全体設計、仕様調整など、判断力と集中力が求められる業務に専念するのです。
一方、所長と若手社員は、現場に常駐してリアルタイムの判断・対応を担います。職人との調整、安全管理、品質チェック、近隣対応など、その場で動ける人が動く。このように役割を明確にすれば、作業効率も、精神的な余裕も大きく変わってきます。
現場のことは現場で完結、デスクワークは別チームで対応。このメリハリをしっかりつけることで、業務の質もスピードも格段に上がります。
あわせて進めたい、オンライン環境の整備
この分業体制を成り立たせるには、ツールの導入も欠かせません。特に効果的なのが、以下のようなオンライン環境の整備です。
- クラウドサービスによる図面・資料の共有(Google Drive、Dropboxなど)
- 定例打ち合わせや進捗報告はZoomやTeamsを活用
- 現場にはライブカメラを設置し、リアルタイムで状況を確認
- 現場スタッフと技術者をつなぐチャットツールで即時連携
こうした仕組みを導入することで、現場にいなくても正確な判断や支援ができるようになります。
オンライン環境は最初の設定こそ少し手間ですが、運用が回り始めれば劇的に負担が軽くなります。特に紙や電話が主流だった現場ほど、その変化は大きく感じられるはずです。
このモデルがもたらす“現場革命”とは?
コアエンジニアモデルは、ただの業務効率化では終わりません。現場の“常識”をまるごとひっくり返すような、新しい運用のカタチなんです。
たとえば、中堅社員1人が4つの現場を横断的にサポートできるようになれば、「中堅がいないから、この案件は諦めよう…」なんて悩みも過去のものになります。人手不足でも、受注数を維持・拡大できる道が開けるんです。
さらに、所長と若手のペアで現場を動かす体制でも、困ったときにいつでも頼れる技術者が控えているから、若手の判断力が育ちやすく、所長も安心して現場を任せられるようになります。そして何より、中堅社員が「現場で呼び出されない環境」で図面チェックや工程表作成に集中できることで、ミスのない正確な仕事ができるようになり、結果的にトラブルや手戻りも激減します。
教育面では、「全員を完璧に育てなければいけない」というプレッシャーから解放されます。このモデルでは、“5人に1人でも育てばOK”という、戦略的な育成方針が取れるんです。できる人に重要な役割を集中させ、他のメンバーはサポートに徹する。それだけで教育の質も、職場の雰囲気も、ぐっとよくなっていきます。
そしてもう一つの大きなメリットは、採用の幅が劇的に広がるということ。
これまでのように「現場に来られるかどうか」だけで採用を判断する必要はなくなります。たとえば、図面チェックができる在宅スタッフや、クラウド事務で書類を処理できる人材など、
全国どこにいても“力を発揮できる働き方”が実現できます。
つまり、今いる人材を最大限に活かしながら、教育・採用・業務の仕組みそのものをアップデートする。それが、コアエンジニアモデルという「現場再設計の仕組み」なんです。
まとめ
「中堅がいないから現場が回らない」「若手が育たず辞めていく」「所長が限界まで掛け持ちしている」
こうした声は、今や多くの建設会社で“当たり前”のように聞かれるようになりました。
でも、だからといって「あきらめるしかない」という時代ではありません。
今回ご紹介した「コアエンジニアモデル」は、限られた人材でも現場を止めず、教育・採用・業務の仕組みそのものを見直すことで、生産性を保ちつつ未来につなぐ運営ができる方法です。
このモデルの本質は、「人を増やす」のではなく、「人の活かし方を変える」こと。そして、「できる人に集中して任せる」「中堅は現場に出ずに技術支援に特化する」「現場とデスクワークを完全に分ける」といった考え方は、これからの建設現場の新しいスタンダードになっていくはずです。
導入は、一気にやる必要はありません。まずは1つの現場、1人の中堅社員からでも構いません。できることから着手して、小さな成功体験を積み重ねていけば、確実に変化は起こせます。
「人が足りないから仕方ない」と悩む時間を、「どうすれば仕組みで回るか」と考える時間に。その最初の一歩として、コアエンジニアモデルをぜひ検討してみてください。
現場を支えるのは、人ではなく、“仕組み”です。そして、あなたの現場にもその仕組みを導入する力が、必ずあります。
詳細は以下の記事をチェックしてください▼

「コアエンジニアモデル」に関心を持たれた方へ
「コアエンジニアモデル」は、施工管理の効率化・働き方改革・企業の成長を同時に実現する、新しい仕組みです。
- より効率的な施工管理の仕組みを導入したい
- 人手不足の課題を解決し、受注量を増やしたい
- 施工管理者の長時間労働を削減し、働きやすい環境を作りたい
このような課題を抱える企業にとって、「コア・エンジニアモデル」は大きな変革のチャンスとなります。しかし、導入には慎重な準備と適切なサポートが不可欠です。

導入を成功させるためのポイント
- 段階的な導入で、現場の負担を最小限に抑える
- デジタルツールの活用に慣れるための教育を実施
- 専門家のアドバイスを活用し、最適な導入方法を設計
- 社内の理解を得て、スムーズな運用体制を築く
現場ラボでは、「コアエンジニアモデル」のスムーズな導入をサポートしています。
導入を検討されている企業様は、ぜひ一度ご相談ください!
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