鉄骨図(S図)は、鉄骨造の建物において柱・梁・接合部など、建物の「骨組み」を示す最も重要な施工図です。この図面をどこまで正確に読み取れるかによって、施工精度・段取り・安全管理の質が大きく変わります。
現場監督にとって、鉄骨図を理解することは「現場を動かすための共通言語を身につける」ようなものです。図面が読めれば、職人・設計者・製作業者との意思疎通がスムーズになり、判断のスピードも格段に上がります。
しかし、実際には「略号が多くて読みにくい」「どこから見ればいいのか分からない」と感じる人も少なくありません。
そこでこの記事では、
- 鉄骨図の基本構成
- 初心者がつまずきやすいポイント
- 読み取りミスを防ぐ実践的なコツ
の3つを軸に、現場で役立つ“鉄骨図の見方”をわかりやすく解説します。
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株式会社 RaisePLAN 代表取締役
武田 祐樹(たけだ ひろき)
【保持資格】
- 一級建築士
- ー級建築施工管理技士
- 一級土木施工管理技士
【これまでの活動】
- 総合建設業で施工管理として17年勤務後、独立起業。
- 建設現場の生産性向上と施工管理の教育支援を展開。
- 中小企業庁「デジタル化応援隊事業」のIT専門家。
- YouTubeチャンネル『建設業を持ち上げるTV』を運営し、登録者1.2万人を獲得。教育特化長尺動画が8万回再生を突破。
- Instagramや音声配信など多メディアで情報発信。
- 電子書籍出版やオンラインセミナーを精力的に実施。
- 2023年3月、AbemaPrime出演で現場効率化施策が注目。
記事の監修

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鉄骨図とは?建物の「骨格」を示す最重要図面
鉄骨図とは、鉄骨造の建物における設計・製作・施工に必要な情報を詳細に示した施工図のことです。いわば、建物の「骨格」を正確に描いた設計図であり、この図面を読み解けるかどうかで現場の精度が大きく変わります。
鉄骨図を正しく理解していないと、次の工程である仕上げ・サッシ・外装などの取り合いも把握できず、
施工全体にズレや手戻りが発生してしまうこともあります。
鉄骨図は大きく2種類に分かれる
鉄骨図は、その役割に応じて大きく次の2種類に分類されます。
① 本体鉄骨図(フレーム図)
建物の主要構造体(柱・梁・ブレースなど)を示す図面です。
建物の荷重を支える部分であり、構造設計の基礎となります。
たとえば、
- 柱(Column)と梁(Beam)の交差位置
- ブレース(筋交い)の配置
- 継手(ジョイント)や接合部の詳細
などが細かく記載されています。
この図面を理解することで、建物がどのように自重や地震力を受け止めているのかを把握できます。
まさに、建築構造の“骨格図”にあたる部分です。
② 付帯鉄骨図
外壁・屋根・天井などの仕上げ材を支えるための下地鉄骨を示す図面です。
主に「胴縁(どうぶち)」「母屋(もや)」「庇(ひさし)」「ブラケット」などが該当します。
これらは建物の強度を直接支えるわけではありませんが、仕上げを美しく、正確に納めるために欠かせない要素です。特に外装やサッシの取り合いでは、付帯鉄骨図を理解していないと干渉や寸法不整合が起こることがあります。
2種類の図面を組み合わせて建物全体を理解する
本体鉄骨図が「建物の骨格」を表しているのに対し、付帯鉄骨図は「骨格に付随する筋肉や皮膚のような役割」を果たしています。この2つを組み合わせて見ることで、建物全体の構造・納まり・仕上げの関係性が理解できるようになります。
鉄骨図の主な構成要素
鉄骨図には、鉄骨製作や施工に必要な情報がすべて詰め込まれています。
図面を正しく読むには、「どんな要素が載っているのか」を体系的に理解することが第一歩です。
以下に、主な構成要素とその意味を解説します。
① 部材記号と寸法
鉄骨図では、各部材にアルファベットと数字の記号が割り振られています。
たとえば「H-300×150×6.5×9」は、次のような意味です。
- H:H形鋼(断面がH形)
- 300:部材の高さ(ウェブ高さ)
- 150:部材の幅(フランジ幅)
- 6.5/9:それぞれウェブ厚・フランジ厚(mm単位)
このように、記号ひとつで形状・寸法・強度が分かる仕組みになっています。
また、図面内では「C-100×50×5」や「□200×200×9」など、Cチャンネル(溝形鋼)や角形鋼管(コラム)も同様に表記されます。
② 接合方法
鉄骨同士の接合には、「溶接」と「ボルト接合」の2種類があります。
- 溶接(Weld):
金属を熱で溶かして一体化する方法。接合部に「▽」「⌓」などの記号で溶接位置・種類・長さが示されます。
例)“F1”=全周溶接、“F2”=部分溶接など。 - 高力ボルト接合(HTB):
高強度のボルトで締め付ける接合。鉄骨図上では「M22 HTB」「4-φ22」などと表記され、ボルト径や本数を確認できます。
③ 取り付け位置・方向
鉄骨図は、どの部材がどの位置・方向で配置されるかを詳細に示しています。
- 平面位置:通り芯(A〜、1〜など)を基準に、柱や梁の正確な位置を指定
- 高さ(レベル):FL(Floor Level)やGL(Ground Level)を基準に、梁・ブレースの高さを明示
- 方向(向き):部材の矢印・矢視方向で、どちら側に取り付けるかを指定
④ 補助図・基準図
鉄骨図は単独で完結するものではなく、関連図面とセットで理解する必要があります。
代表的な補助図には以下があります。
補助図 | 内容 |
---|---|
アンカープラン(AP) | 基礎コンクリートに埋め込むアンカーボルトの配置図。鉄骨柱脚の位置精度を左右する。 |
溶接基準図(Weld Standard) | 溶接の種類・長さ・脚サイズなどを一覧化した基準図。記号の意味を確認できる。 |
継手リスト(Joint List) | 鉄骨同士をどのように接続するか(ボルト・プレートの種類など)をまとめた一覧。 |
製作図(Shop Drawing) | 製作工場が鉄骨部材を加工するための詳細図。部材寸法や孔位置を示す。 |
これらを合わせて確認することで、構造全体のつながり・強度バランスが見えてきます。
初心者がつまずきやすいポイント
鉄骨図には、現場で使われる多くの専門記号や略号が登場します。
これらを理解しておくことで、図面を見ただけで構造のイメージを正確に掴めるようになります。
記号 | 意味・内容 |
---|---|
AP | アンカープラン(Anchor Plan): 柱脚部の固定位置やアンカーボルトの配置を示す図。基礎と鉄骨をつなぐ重要部分。 |
CP | 柱(Column Post): 建物を縦方向に支える構造部材。C=主柱、P=間柱を表すことが多い。 |
GB | 大梁(Girder Beam): 建物の主要な梁。柱から柱へ荷重を伝える太い梁。 |
CB | 小梁(Cantilever Beam): 大梁の上に掛かる補助的な梁。床や屋根などを支える。 |
V | ブレース(Brace): 筋交い。柱と柱の間に斜めに入る補強材で、建物の“揺れ”を防ぐ。 |
J | 継手(Joint): 部材同士をつなぐ接合部。溶接・ボルトなどで固定される。 |
HTB | 高力ボルト(High Tension Bolt): 通常のボルトより強度が高い接合用ボルト。梁・柱の固定に使用される。 |
略号だけでなく、鉄骨の断面形状も図面を読むうえで欠かせません。
代表的な形状は以下の3種類です。
名称 | 特徴 |
---|---|
H形鋼(H-Beam) | 断面がアルファベットの「H」の形。梁や柱の主構造材として最も多く使われる。 |
Cチャンネル(C形鋼) | 溝型鋼材。軽量で扱いやすく、間柱や補助フレームに多用される。 |
コラム(角形鋼管) | 四角い断面を持つ鋼管。主に柱として使用され、見た目がスッキリして強度が高い。 |
初心者が混乱しやすいポイント
- 同じ梁でも「G梁」「B梁」「CB」など複数の表記がある
→ 図面によって略号ルールが異なるため、凡例(図面注釈)を必ず確認。 - 寸法表記の単位が混在している
→ “mm”と“cm”が併用されている場合があり、読み間違えると施工ミスにつながる。 - 溶接・ボルトの記号が似ている
→ 矢印付きの記号や「F1」「PL」など、基準図と照らし合わせて確認することが大切。
初心者のうちは、自分専用の「記号一覧ノート」や「略号早見表」を作っておくと便利です。
図面を読むたびに確認する習慣をつければ、次第に記号を“直感的に理解できるレベル”にまで成長できます。
読み取りミスを防ぐコツ
鉄骨図は、部材や接合部の情報量が多く、慣れないうちはどうしても読み間違いが起こりやすい図面です。特に、略号・寸法・方向などの見落としは、施工段階で大きなトラブルにつながることもあります。
ここでは、現場でミスを防ぐための具体的なポイントを紹介します。
① 記号表を常に手元に置く
鉄骨図では、アルファベット記号や溶接・ボルト記号など、専門的な表現が数多く使われます。
これらをすべて覚えようとするのではなく、記号表を手元に置いて確認しながら読む習慣をつけましょう。
社内共有フォルダや自分専用のノートに「略号一覧」や「接合記号早見表」をまとめておくと、
確認のたびに知識が定着していきます。
ポイント:新しい現場や異なる設計事務所の図面では略号ルールが異なる場合もあるため、図面ごとの凡例欄を必ず確認しましょう。
② 現場で照合して理解を深める
図面を机上で眺めるだけでは、鉄骨の立体的なつながりをイメージしづらいものです。
実際に現場で部材の配置や接合部を“実物と照らし合わせながら確認”することで、図面の理解が格段に深まります。
たとえば、図面上で「GB」「CB」と記載されている部材を現場で探してみると、どちらが大梁でどちらが小梁かが直感的に理解できます。
ポイント:現場での照合は、図面を「ただ読む」から「理解して使う」へと変える学び方です。
③ 繰り返し練習する
鉄骨図の理解は、一度で身につくものではありません。
日々の業務で図面を見るたびに、「なぜこの部材配置になっているのか」「この記号の意味は何か」を意識して確認しましょう。
毎日の小さな疑問を積み重ねて解決していくことで、自然と記号・寸法・構造の関係性が頭に残り、読み取りスピードと精度が上がっていきます。
ポイント:先輩や協力業者と一緒に図面を見ながら意見交換するのも効果的です。人の説明で“腑に落ちる”経験が、最も記憶に残ります。
④ 関連図面と併せて確認する
鉄骨図は単独で完結するものではありません。
構造図・施工図・溶接基準図・アンカープランなど、複数の図面をセットで確認することで、全体像がより正確に見えてきます。
たとえば、鉄骨図で示されている「継手位置」や「接合方法」を、構造図の基準寸法と照らして確認すれば、製作・施工双方の整合性を把握できます。
ポイント:図面同士の“つながり”を理解することが、ミスを未然に防ぐ最大の防御策です。
まとめ:鉄骨図は「現場理解の入り口」
鉄骨図は、建築施工管理の“基礎”でありながら、現場対応力を大きく左右する“実践スキル”です。柱・梁・ブレースなどの配置や接合方法を正確に読み取れるようになると、構造全体のイメージが明確になり、施工の精度とスピードが向上します。
また、鉄骨図を理解することは、「指示されて動く」から「自分で考えて動ける」監督になるための転換点でもあります。図面を読む力があれば、職人への説明や設計者との打ち合わせも的確に進められ、信頼される現場管理者へと成長できます。
最初は略号や記号が難しく感じるかもしれませんが、
- 記号表を確認しながら読む
- 現場で照合して理解する
- 関連図面をあわせて確認する
といった地道な習慣を積み重ねることで、確実に「読める図面」が増えていきます。
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