建設業界に新しく飛び込んだ新人施工管理者。
配属されたはいいけど、「一体、何からやればいいの…?」と右も左も分からない状態になる人も多いのではないでしょうか?
今回は、建築と土木それぞれの現場で新人として働いた経験をもとに、新人施工管理者は現場でまず何をするのか?について対談形式で深掘りしました。
実体験に基づいたリアルな声が詰まっていますので、これから現場に出る方、あるいは新人教育を担当される方にもぜひ読んでほしい内容です。

つなぐたすける土木株式会社 代表取締役
松岡 由高(まつおか よしたか)
国内外で設計・施工の実務経験を重ね、NEXCOや国交省案件などのインフラ事業に多数携わる。アジア2カ国での海外赴任を通じ、異なる環境での現場管理やプロジェクト推進のノウハウも蓄積。
現在は、中小建設会社の働き方改革や業務効率化の支援に注力。建設業界の生産性向上を目指し、ITツールの導入支援や現場のデジタル化を推進中。
【これまでの活動】
- 1987年生まれ 愛知県在住
- 平成23年 名古屋大学大学院卒業後、大成建設(株)に入社
- 平成30年 1級土木施工管理技士を取得
- 令和3年 ショーボンド建設(株)に転職
- 令和6年 起業・独立
つなぐたすける土木株式会社
代表取締役
松岡 由高(まつおか よしたか)

国内外で設計・施工の実務経験を重ね、NEXCOや国交省案件などのインフラ事業に多数携わる。アジア2カ国での海外赴任を通じ、異なる環境での現場管理やプロジェクト推進のノウハウも蓄積。
現在は、中小建設会社の働き方改革や業務効率化の支援に注力。建設業界の生産性向上を目指し、ITツールの導入支援や現場のデジタル化を推進中。
【これまでの活動】
- 1987年生まれ 愛知県在住
- 平成23年 名古屋大学大学院卒業後、大成建設(株)に入社
- 平成30年 1級土木施工管理技士を取得
- 令和3年 ショーボンド建設(株)に転職
- 令和6年 起業・独立
株式会社 RaisePLAN 代表取締役
武田 祐樹(たけだ ひろき)
【保持資格】
- 一級建築士
- ー級建築施工管理技士
- 一級土木施工管理技士
【これまでの活動】
- 総合建設業で施工管理として17年勤務後、独立起業。
- 建設現場の生産性向上と施工管理の教育支援を展開。
- 中小企業庁「デジタル化応援隊事業」のIT専門家。
- YouTubeチャンネル『建設業を持ち上げるTV』を運営し、登録者1.2万人を獲得。教育特化長尺動画が8万回再生を突破。
- Instagramや音声配信など多メディアで情報発信。
- 電子書籍出版やオンラインセミナーを精力的に実施。
- 2023年3月、AbemaPrime出演で現場効率化施策が注目。
記事の監修

株式会社 RaisePLAN 代表取締役
武田 祐樹(たけだ ひろき)
【保持資格】
- 一級建築士
- ー級建築施工管理技士
- 一級土木施工管理技士
記事の監修

【これまでの活動】
- 総合建設業で施工管理として17年勤務後、独立起業。
- 建設現場の生産性向上と施工管理の教育支援を展開。
- 中小企業庁「デジタル化応援隊事業」のIT専門家。
- YouTubeチャンネル『建設業を持ち上げるTV』を運営し、登録者1.2万人を獲得。教育特化長尺動画が8万回再生を突破。
- Instagramや音声配信など多メディアで情報発信。
- 電子書籍出版やオンラインセミナーを精力的に実施。
- 2023年3月、AbemaPrime出演で現場効率化施策が注目。
新人施工管理者の最初の1週間ってどんな感じ?

結論から言うと、とにかく現場に出ることになります。
朝7時すぎには現場に到着して、8時の朝礼までに準備。ヘルメット、安全靴、軍手、そして支給されたタブレットかカメラを持って、職人さんたちの集まる仮設事務所や資材置き場に向かいます。
土木現場の新人1週間(例)
配属初日。いきなり「これ持ってついてこい」と言われて手渡されたのは、三脚とトランシット(測量機器)。右も左も分からない中、先輩の後をついて現場内を歩き回ります。
- 1日目:ひたすら現場を歩いて「どこに何があるのか」「どんな作業が進んでいるのか」を見る。
- 2日目:工事の写真撮影を手伝う。写真には「ロット番号」「日付」「工程」が求められるため、記録の精度が問われる。
- 3日目:測量の補助。先輩が水平を出す傍で、スタッフ(助手)としてポイントを押さえる。
- 4日目:安全パトロールに同行。掲示板や立ち入り禁止のロープ、足場の確認など、現場の“安全の目”を養う。
- 5日目:立ち会い時の段取りや記録の補助。作業前に「この工程、誰が何時からどこで何をするか」を確認し、記録。
建築現場の新人1週間(例)
建築の場合も、まずは「現場に慣れる」が最優先。朝礼では職人さんの前で「本日担当の○○です。よろしくお願いします!」と挨拶からスタート。
- 1日目:墨出しや躯体(くたい)確認作業を先輩の後ろで見て学ぶ。建物の“骨格”がどう作られていくかを実感。
- 2日目:先輩が図面を持って歩く姿についていき、図面と実物を照らし合わせる“現場感覚”を養う。
- 3日目:現場の片付けを任される。「整理整頓の行き届いた現場は事故も少ない」という基礎マインドを叩き込まれる。
- 4日目:朝礼の司会進行を担当。「段取り八分」という言葉の意味を、職人との調整の難しさの中で実感。
- 5日目:仮囲いや資材置場の安全チェック。「この単管、ちゃんとキャップしてる?」「釘、飛び出してない?」と安全目線が芽生え始める。
最初の1週間は、とにかく「現場の空気を身体に染み込ませる」期間です。作業そのものよりも、現場で働く人たちの動き・役割・空間の使われ方を観察することが、今後の学びを大きく左右します。
土木と建築、それぞれの「現場での一日」

配属されて1週間も経てば、「現場に出ること自体には少し慣れてきた」という頃。ですが、「じゃあ一日どんなふうに動いているのか?」は土木と建築で違いがあります。
ここではそれぞれの典型的な1日の流れを具体的に見ていきましょう。
土木の場合|“測る・撮る・守る”が基本動作
土木の現場での一日は、測量・写真撮影・安全確認という3本柱で動いていきます。
現場写真の撮影
朝礼後、まずはその日の作業工程に合わせて記録写真の準備。
「掘削状況を撮っておいて」「鉄筋の配筋前の状態を残しておいて」など、指示に応じて黒板に情報を書き、それを写し込みながら現場写真を撮影していきます。
撮影には“ロット管理”という概念があり、作業単位ごとに段階的な写真を残す必要があります。つまり、ただ写真を撮るだけではなく、「どの工程で、何を撮るのか?」を理解しながら記録する力が求められます。
測量補助(レベル・トランジットなど)
測量の場面では、レベル(高さ)やトランジット(角度)の設定を先輩が行い、それをサポートするのが新人の役目。三脚を立てたり、スタッフを持ってラインを出したりと、力仕事と精密さの両立が求められます。
最近ではICT施工やドローン測量も導入される現場が増えていますが、基本の“足”で稼ぐ測量補助は、やはり最初の登竜門です。
安全管理(掲示物の点検や注意喚起)
掲示板の更新や安全通路の点検、足場の確認など、「危険を未然に防ぐ」視点で現場を見る力を養っていきます。
「単管バリケードのキャップ、ちゃんと付いてるか?」「重機と歩行者が交差する場所、誘導員いるか?」など、日々の“気づき”をメモに残して報告する習慣も大切です。
建築の場合|“読む・歩く・見る”が基本動作
建築現場においては、現場を読み解きながら図面と照らし合わせていく力が求められます。最初のうちは図面の意味すらよくわかりませんが、それでも「分からないなりに見る」ことが大切です。
現場巡視と安全点検
新人も朝礼が終わったら、まずは現場を歩いて「何がどこで進んでいるのか」を観察します。
職人さんがどんな作業をしているか、安全掲示板にどんな注意書きがあるか、歩くたびに学びのヒントが詰まっています。
墨出し作業の補助
「墨出し」とは、図面上の位置情報を実際の床や壁にマーキングする作業のこと。先輩がチョークで線を引いている様子を見ながら、“図面の線が現場の線になる瞬間”を目にするのは大きな学びになります。
新人はその横で道具を持ったり、スケールを押さえたりするサポートが中心ですが、図面と現場がつながる感覚がここで養われていきます。
図面確認と先輩の同行
建築はとにかく「図面を読めなければ話にならない」世界。最初のうちは、先輩が持っている設計図や施工図を一緒に覗き込みながら、「この記号は何?」「ここの寸法、どう読むの?」といった基礎を少しずつ覚えていきます。
実物と図面の整合性を見たり、ズレがある箇所をメモしたりすることで、「読み解く目」が育っていくのです。
どちらの分野も、共通して大切なのは「現場を歩いて、見ること、聞くこと、動くこと」。
施工管理のスタートラインは、“現場の空気を掴む”ことから始まります。
最初に覚えるべきは「写真・安全・段取り」

配属されて最初に任される業務というのは、実はものすごく地味です。でもこの「地味な仕事」こそが、現場全体を把握するための基礎体力を養う大切な入り口。
施工管理の仕事を大きく分けると、最初に新人が任されるのは以下の3つに集約されます。
1. 現場写真の撮影と記録管理
どんな現場でも、施工の記録として写真を撮ることは基本中の基本です。
ただし、「ただ撮る」だけではなく、“誰が見ても状況が分かる”写真を求められるのが施工管理のプロとしての第一歩。
例えばこんな場面
- 掘削した溝の深さを写すために、スケールを立てて撮る
- 配筋(鉄筋組み)のピッチや定着長さを記録するために、黒板に内容を記入して添える
- 生コン打設前に型枠や鉄筋の状況を記録しておく
撮影する順番や角度、照明の当たり方まで意識するようになれば、もう立派な“写真職人”です。
2. 安全チェックと掲示物管理
施工管理の重要なミッションの一つが「現場の安全を守ること」です。
新人でもすぐに任されるのが、安全掲示物のチェックや更新。
例えばこんな場面
- 朝礼看板に今日の作業予定をマジックで書き込む
- ヘルメット着用や立ち入り禁止の表示が正しい位置にあるか確認する
- 足場のつなぎ目にキャップが付いていない箇所を見つけて、先輩に報告する
自分の目で現場を“見る力”を養うことが、事故を未然に防ぐ第一歩になります。
3. 先輩や職人との段取り調整
そして、最も施工管理らしい仕事がこの“段取り”。「この作業をやるためには、どんな準備が必要で、どの職種に、いつ、どこで動いてもらうか?」を考えるのが段取りの基本です。
新人のうちは、先輩がどんな順序で職人に声をかけているのか、どんな図面や工程表を使って調整しているのかを隣で“盗み見て”学ぶところからスタートです。
例えばこんな場面
- 「明日、鉄筋屋さん来るけど、その前に型枠の解体間に合う?」という先輩の調整を横で聞く
- 職人さんに「今日の作業どこまで終わる予定ですか?」と聞いてスケジュール表にメモ
- 朝礼の司会を任され、各職種の作業予定を共有する役割を担う
中間管理職の“入り口”に立つ
施工管理はよく「現場の中間管理職」と呼ばれます。実際、職人と上司、作業者と元請けとの間に立って動く役割があるため、気配り・先回り・コミュニケーションがすべての基本です。
新人のうちは、「これが施工管理だ!」と実感できるまでには時間がかかります。でも、写真を撮り、安全を守り、段取りに耳を傾けるこの3つができれば、確実に“現場の目”は養われていきます。
測量機器と精密機器との付き合い方

「このレベル、お前壊したら200万な」
新人にとってはインパクトのある一言ですが、冗談ではなく実際に現場ではそれくらい高価な測量機器を扱うこともあります。特に土木現場では、新人であってもそうした精密機器の取り扱いを任される場面が少なくありません。
一方、建築現場にも測定機器はありますが、その用途や関わり方は土木とはかなり異なります。ここでは、両者の違いを具体的に整理してみましょう。
土木の現場:測量が仕事の“基礎中の基礎”
土木において測量は、工事そのもののスタート地点。
山を削る、川を埋める、道を伸ばす──すべての作業の基準をつくるために、高さ・角度・距離を正確に測る作業が欠かせません。
主な機器と関わり方
- レベル(オートレベル):高低差を測るための基本中の基本。新人が最初に触れる機器。
- トランシット/トータルステーション:角度や距離を測る。操作補助や反射プリズムを持って立つのも新人の役目。
- ドローン・3Dスキャナ:最新の測量では、空撮や点群データで広範囲を把握することも増えている。
現場では「精密機器=命綱」のような存在なので、落とさない・濡らさない・ぶつけないは鉄則。
「設置ミスで全部の高さがズレた…」なんてことがないように、丁寧な取り扱いとチェックが求められます。
建築の現場:仕上げと管理に特化した“位置の確認役”
建築では、すでに造成された平らな地盤の上に建物を建てていくため、土木ほどの大規模測量は発生しません。ただし、「正確な位置に、正確な高さで」施工するために、建築なりの精密さが求められる場面も多くあります。
主な機器と関わり方
- レーザー墨出し器:柱や壁の芯を出すために使う。建築の墨出し作業に欠かせない。
- レベル(オートレベル):床の仕上げ高さ、設備機器の据付位置などの確認に使用。
- 図面との整合確認ツール:施工図や仕様書を現場と突き合わせる“管理のための測定”。
建築では、「設計図通りに作ること」=精度の高い施工とされるため、測定機器の使用は「管理の一部」として位置づけられ、図面理解力とセットで活用する力が求められます。
比較でわかる!土木と建築の「測量・機器」使い方の違い
観点 | 土木 | 建築 |
---|---|---|
主な目的 | 地形・構造物の基準を作る | 建物の位置出し・仕上げ精度の確認 |
機器の種類 | レベル、トランシット、トータルステーション、ドローン | レーザー墨出し器、レベル、簡易測定器 |
新人の関わり方 | 測量補助としてガッツリ関与 | 補助的に関わりつつ、図面理解との連動が鍵 |
扱いの注意点 | 高精度&高額機器が多く、物理的取り扱いに注意 | 精度も大事だが、「読み間違い」や「見落とし」が致命傷になる |
新人がまず意識しておきたいこと
- 「分からないことをそのままにしない」
どの機器も使い方にルールがあり、ミスすれば工程が止まる可能性もあります。疑問点は即座に確認を。 - 「使いこなす」より「正しく扱う」が先
いきなりプロのように使いこなせなくてOK。それよりも、機器の保護・設置・記録といった“基礎の徹底”が信頼を生みます。 - 「測る」ことで現場を知る
機器を通して現場を見ると、ただ眺めているだけでは気づけなかった“流れ”や“仕組み”が見えてきます。
測量や機器に関わる仕事は、最初は緊張するものですが、ここを乗り越えた人は「現場を数字で語れる人」になれる。それは施工管理者としての大きな強みになります。
現場での人間関係と声かけの難しさ

現場に配属され、少しずつ作業内容が見えてきても、新人が最も緊張するのは「人との関わり」です。
特に、職人さんとの距離感や声のかけ方に戸惑う新人はとても多いものです。
最初は「誰に、何を話せばいいのか」がわからない
朝礼のとき、ずらっと並んだ職人さんたち。黙々と道具の準備をしているその姿に、どう接すればいいのか分からず、遠巻きに見ているだけ……という経験は、誰しも一度は通る道です。
現場にいる人たちが、どの職種の、どんな立場の人かもよく分からない。話しかけるタイミングも内容もつかめずに、ただ立っているだけの時間が続く。これが配属当初のリアルな現場風景かもしれません。
「これ危なくない?」と思っても、言えないのが普通
現場を歩いている中で、「あれ、ちょっと危ないかも?」と感じる場面に出くわすことがあります。たとえば、高所で安全帯を付けずに作業している、重機の近くを人が横切っている、といった状況です。
しかし、たとえ危険を感じたとしても、職人さんに直接注意するのはハードルが高いものです。
「自分が間違っていたらどうしよう」「新人の自分が言ってもいいのか」といった不安が先に立ち、結局何も言えずに終わる……というのは珍しくありません。
大事なのは「気づいて、相談すること」
新人のうちは、注意できなくて当然です。それよりも、「これは大丈夫なのかな?」と感じたことを、すぐに先輩や上司に相談することが大切です。
たとえば、
「先輩、さっきの作業の件なんですけど、安全帯が見えなかったんですが、あれって大丈夫なんですか?」
こうした問いかけができるかどうかで、現場での学びの質は大きく変わってきます。また、そうした姿勢を見せることで、「お、ちゃんと現場を見ようとしてるな」と信頼も少しずつ生まれていきます。
職人さんとの信頼関係は、毎日のふるまいから始まる
「いきなり仲良くなる」ことは求められません。でも、毎日のあいさつ、掃除、荷物の運搬、些細な声かけ、そういった一つひとつの行動が、確実に信頼につながっていきます。
たとえば、
- ゴミを見つけたらサッと拾う
- 資材の搬入経路を先回りして確保する
- 困っている人がいれば黙って手を貸す
そうした「言葉ではない貢献」を重ねていくことが、職人さんとの距離を自然に縮めていく近道です。
会話は「質問」から始めるとスムーズ
「何を話していいかわからない」という時は、「今の作業って何をしているんですか?」「このあと、どの工程に進むんですか?」といった確認ベースの質問から始めるのが効果的です。
自分の意見を言うよりも、まずは「知ろうとする姿勢」を見せることで、相手の反応も柔らかくなります。
最初からうまくやろうとしなくていい
新人の時期は、「声をかけられない」「何を言っていいか分からない」という悩みがつきものです。
けれど、それはごく自然なことです。
大切なのは、気づいたことをそのままにしないこと。
そして、誰かに相談すること。わからないことをそのままにしないこと。
こうした小さな積み重ねが、現場の信頼につながっていきます。
「できるようになる」よりも先に、「関わろうとする」姿勢が、何よりも重要です。
建築と土木の“道具”と“図面”の違い

施工管理の仕事は、図面を読み、現場でその通りに進んでいるかを確認し、記録し、調整することが基本です。しかし、その際に使う「道具」や「図面」の役割や扱い方には、建築と土木で明確な違いがあります。
土木の道具と図面:地形と構造を“数字”で捉える
土木の現場では、まず地面そのものを扱うところから工事が始まります。
そのため、使う道具は「測る」「記録する」ことに特化したものが中心になります。
よく使う道具
- 野帳(やちょう):測量結果や日々の記録をすぐにメモできる必携アイテム。耐水性があるものが多い。
- ラチェットレンチ:仮設足場や単管の締め付けなど、ちょっとした手直しに便利。
- スケール(メジャー):掘削幅、配筋ピッチなどを現場で実測する。
- 測量機器:レベル、トランシット、トータルステーションなど、位置と高さを正確に出すために必須。
図面の読み方
土木では「設計図」の内容が基本となり、そこに基づいて現場を管理します。
構造物の配置、高さ、角度、距離など、数字での管理が中心です。設計図を読み解く力と、現場でその通りに進んでいるかを正確に確認するスキルが求められます。
建築の道具と図面:“設計意図”をかたちにするためのツール
建築の現場では、すでに整備された地盤の上に、設計された構造物を組み上げていく作業が中心です。
そのため、道具も「線を出す」「精度を確認する」「情報を読む」といった作業に特化しています。
よく使う道具
- 墨出し用スケール:図面上の通り芯や寸法を、実際の床や壁にマーキングするために使う。
- レーザー墨出し器:垂直・水平ラインを現場に表示し、正確な位置出しを行う。
- 図面・仕様書・施工図:作業ごとに必要な情報が詰まった資料。常に携帯して確認する習慣が重要。
- クリッパー、カッター、メモ帳など:細かな補助作業や記録のために持ち歩く。
図面の読み方
建築では「設計図」だけでなく、「施工図」の理解が非常に重要になります。施工図は、各職種ごとの作業内容が詳細に描かれた図面で、設計図よりも実務寄り。
「この図面は誰が見るためのものか」「この線は何を意味するのか」といった“図面リテラシー”が求められます。
建築と土木、それぞれの違いと共通点
項目 | 土木 | 建築 |
---|---|---|
主な道具 | 野帳、測量機器、スケール、ラチェット | 墨出しスケール、図面、レーザー墨出し器 |
図面の種類 | 設計図中心、数字・位置・勾配重視 | 設計図+施工図、詳細・納まり重視 |
新人の役割 | 測量補助、現場写真、記録 | 墨出し補助、図面確認、作業補助 |
管理の軸 | 地形・構造物の「正確さ」 | 設計意図と施工内容の「整合性」 |
どちらの現場でも共通するのは、「図面と現場をつなぐ役割」が施工管理者であるということ。
そのために、自分が使う道具や図面を理解し、的確に扱えることが新人としての成長の第一歩となります。
「この道具は何のためにあるのか?」「この図面は誰に渡すものか?」と、ひとつひとつ丁寧に学んでいくことで、現場全体の見え方も大きく変わってきます。
指示される側から、段取りする側へ

施工管理という仕事の特徴は、「誰かの指示通りに動く」だけでは終わらないところにあります。新人であっても、現場に立つ以上は「職人さんに頼まれる」「先輩に報告する」「作業を先回りして考える」といった役割を自然と担うようになります。
これは、まさに「指示される側」から「段取りする側」への変化の第一歩です。
中間管理職のようなポジションを最初から担う
施工管理者は、現場における調整役。現場に出るようになってすぐに、職人と上司、作業者と設計者の“間”に立つ立場になります。
- 職人さんには「次に何をやってもらうか」
- 上司や先輩には「どこまで進んでいるか」「問題はないか」
この両方を把握し、間に立ってスムーズに作業が進むように段取りをつけていく。
まさに、新人でありながら「中間管理職」と呼ばれる理由がここにあります。
最初は知識がなくて当たり前。それでも“段取り力”は磨ける
現場では専門用語が飛び交い、職人さんの動きも早く、何がどう進んでいるのか分からないことだらけです。そんな中でいきなり段取りを任されるわけではありませんが、先輩たちがどう段取りをしているかを観察することは今日からでもできます。
たとえば、
- 明日の作業に必要な材料が届いているかチェックする
- 先に作業する職種と、後に続く職種の関係を理解する
- 職人さんが困っている様子を見て「何かあったのか?」と気づく
こうした視点を持つだけでも、現場での立ち回りが変わってきます。
「段取り八分、仕事二分」が現場の鉄則
施工現場ではよく「段取り八分、仕事二分」と言われます。つまり、準備がすべてを決めるという考え方です。
材料が届いていない、重機の手配ができていない、職人さんの工程がバッティングしている。こうした段取りミスがあると、現場は一気に混乱します。
逆に、段取りがきちんとされていれば、作業そのものはスムーズに終わり、手戻りも少なくなります。新人であっても、「明日何が起きるか」を想像して、必要な準備や確認を“1個でも”できるようになることが、立派な段取り力の第一歩です。
自分の動きひとつで、現場が回り出す感覚
段取りが決まり、それがうまくいったとき。職人さんから「お、段取りしてくれたの?助かるよ」と声をかけられたとき。そういう瞬間に、自分がこの現場に必要とされていることを実感できるはずです。
施工管理の醍醐味は、「人を動かすこと」ではなく、「人が気持ちよく動けるように整えること」にあると言っても過言ではありません。
その第一歩が、段取りです。
新人に向けた、現場の心構えとアドバイス

現場に出たばかりの頃は、分からないことだらけで当然です。図面も道具も人の動きも、何もかもが初めてで、自分の無力さを痛感する日々かもしれません。
でも、それは誰もが通ってきた道です。ここでは、これから現場に立つあなたに伝えたい心構えを二つの視点からまとめました。
恥をかいた分だけ、成長できる
新人時代は、とにかく「恥をかく」くらいがちょうどいいのです。
現場で何も知らずに的外れな質問をしてしまったり、先輩に言われたことが理解できずにうろたえたり。
そうした一つひとつの失敗や戸惑いが、あなたを成長させるための経験そのものです。
重要なのは、分からないまま黙ってやり過ごさないこと。
「すみません、これどういう意味ですか?」「今の作業、もう一度教えてもらっていいですか?」と聞けるかどうかが、未来を分けます。
現場では、知ったかぶりよりも、正直さと謙虚さが信頼につながります。
「分からないこと」を潰す姿勢が、最短の成長戦略
知識や技術は、あとからいくらでも身につけられます。でも、分からないことに気づいて、それを自分の手で潰していく姿勢は、今すぐにでも始められることです。
たとえば、
- 職人さんが使っている道具の名前を知らなかったらメモして調べる
- 図面に出てくる記号の意味を確認する
- 朝礼で聞いた用語をそのままにせず、先輩に聞いてみる
こうした「分からない」を見逃さず、一つずつ潰していく姿勢が、結果的に一番早く一人前に近づく道になります。
知っているかどうかではなく、「知ろうとしているかどうか」。
その意識が、1年後、3年後のあなたを大きく変えていきます。
施工管理という仕事は、人や工程、モノや時間をどう組み合わせるかを考える、いわば“現場の舵取り役”です。
その力は、一日一日の小さな積み重ねからしか生まれません。だからこそ、今は恥を恐れず、分からないことを恐れず、目の前の現場で全力を尽くしてみてください。
その積み重ねが、確かな「現場力」になります。
まとめ|現場は「恥をかく」場所。だから、ちゃんと成長できる
施工管理の仕事は、最初から何でもできる必要はありません。
分からなくて当たり前、失敗して当然。新人のうちは、それを受け入れることから始まります。
でも、毎日現場に立って、ひとつずつ経験を積んでいけば、
「これは見たことがある」「この作業は前にやったことがある」
そうやって、できることが少しずつ増えていきます。
まずは、現場の安全を理解すること。そして、職人さんの動きや現場の流れをよく観察し、道具や図面を少しずつ味方にしていくこと。
何より大切なのは、恥をかくことを恐れず、分からないことをそのままにしない姿勢です。その積み重ねが、確かな「現場力」として、あなたの武器になっていきます。
焦らず、丁寧に。一歩ずつ、自分のペースで歩んでいきましょう。