「施工管理って、やること多すぎない?」
「ほんと。今も昔も、首がもげそうなほど大変だよ。」
建築・土木の現場で働く人なら、きっと一度は思ったことがあるはずです。
僕は建築の施工管理として、松岡さんは道路やインフラ工事などの土木の現場で、それぞれ施工管理をやってきました。分野は違っても、共通しているのは「とにかくタスクが多い」ということ。職人対応、資材の段取り、図面の確認、打ち合わせ、写真整理、安全書類の整備……毎日、やることが尽きません。
そんな中で、どうやって抜け漏れなく現場を回していくのか?
今回の対談では、建築出身の僕と土木出身の松岡さんが、それぞれ実践してきたタスク管理の工夫について語り合いました。
スマホ派と紙派、それぞれのやり方。タスクの可視化、優先順位のつけ方、忘れないための“ちょっとズルい”テクニック。若手に段取り力を身につけさせるための工夫も、リアルな話として紹介しています。
「タスクに追われてばかりで、余裕がない」
そんな毎日を変えるきっかけになれば嬉しいです。

つなぐたすける土木株式会社 代表取締役
松岡 由高(まつおか よしたか)
国内外で設計・施工の実務経験を重ね、NEXCOや国交省案件などのインフラ事業に多数携わる。アジア2カ国での海外赴任を通じ、異なる環境での現場管理やプロジェクト推進のノウハウも蓄積。
現在は、中小建設会社の働き方改革や業務効率化の支援に注力。建設業界の生産性向上を目指し、ITツールの導入支援や現場のデジタル化を推進中。
【これまでの活動】
- 1987年生まれ 愛知県在住
- 平成23年 名古屋大学大学院卒業後、大成建設(株)に入社
- 平成30年 1級土木施工管理技士を取得
- 令和3年 ショーボンド建設(株)に転職
- 令和6年 起業・独立
つなぐたすける土木株式会社
代表取締役
松岡 由高(まつおか よしたか)

国内外で設計・施工の実務経験を重ね、NEXCOや国交省案件などのインフラ事業に多数携わる。アジア2カ国での海外赴任を通じ、異なる環境での現場管理やプロジェクト推進のノウハウも蓄積。
現在は、中小建設会社の働き方改革や業務効率化の支援に注力。建設業界の生産性向上を目指し、ITツールの導入支援や現場のデジタル化を推進中。
【これまでの活動】
- 1987年生まれ 愛知県在住
- 平成23年 名古屋大学大学院卒業後、大成建設(株)に入社
- 平成30年 1級土木施工管理技士を取得
- 令和3年 ショーボンド建設(株)に転職
- 令和6年 起業・独立
株式会社 RaisePLAN 代表取締役
武田 祐樹(たけだ ひろき)
【保持資格】
- 一級建築士
- ー級建築施工管理技士
- 一級土木施工管理技士
【これまでの活動】
- 総合建設業で施工管理として17年勤務後、独立起業。
- 建設現場の生産性向上と施工管理の教育支援を展開。
- 中小企業庁「デジタル化応援隊事業」のIT専門家。
- YouTubeチャンネル『建設業を持ち上げるTV』を運営し、登録者1.2万人を獲得。教育特化長尺動画が8万回再生を突破。
- Instagramや音声配信など多メディアで情報発信。
- 電子書籍出版やオンラインセミナーを精力的に実施。
- 2023年3月、AbemaPrime出演で現場効率化施策が注目。
記事の監修

株式会社 RaisePLAN 代表取締役
武田 祐樹(たけだ ひろき)
【保持資格】
- 一級建築士
- ー級建築施工管理技士
- 一級土木施工管理技士
記事の監修

【これまでの活動】
- 総合建設業で施工管理として17年勤務後、独立起業。
- 建設現場の生産性向上と施工管理の教育支援を展開。
- 中小企業庁「デジタル化応援隊事業」のIT専門家。
- YouTubeチャンネル『建設業を持ち上げるTV』を運営し、登録者1.2万人を獲得。教育特化長尺動画が8万回再生を突破。
- Instagramや音声配信など多メディアで情報発信。
- 電子書籍出版やオンラインセミナーを精力的に実施。
- 2023年3月、AbemaPrime出演で現場効率化施策が注目。
施工管理の実態:「仕事多すぎ問題」は今も昔も変わらず
施工管理という仕事を一言で表すなら、「現場を滞りなく動かすための司令塔」。でも、その“司令塔”は、実際には膨大な雑務や段取り、確認作業に追われるマルチタスクの塊です。
たとえば1日の業務をざっと挙げるだけでも以下の通り。
- 職人の出面確認と作業指示
- 当日の工程進捗の確認と調整
- 搬入・搬出の手配と立ち会い
- 発注書・見積もり・請求書の処理
- 図面修正や施工図のチェック
- 現場写真の撮影・整理・報告
- 発注者や設計者との打ち合わせ対応
- 安全書類やKY(危険予知活動)の作成
- 翌週以降の工程の段取りと調整
- 現場巡回と指導、安全指摘対応 etc.
これを一人でやってるという現場、実際にまだまだ多いです。
特に中堅どころにあたる30代、40代の施工管理職は、若手の育成や、設計・施主対応も同時並行。まさに「全部入りの総合格闘技」のような仕事です。

やることが10個あって、その10個を全部頭の中で管理しようとすると、もうそれだけでパンクします。現場が動きながら、その場でどんどん『あれやって、これやって』が降ってくるので…。
さらに厄介なのは、タスクの順番や優先順位がその場その場でどんどん変わることです。
たとえば朝、「今日は図面に集中しよう」と思っていても、職人さんから「材料足りません」と連絡が入ったり、元請から「午後に急な立ち会いをお願いします」と電話がきたり。こういった“割り込み”は日常茶飯事です。
だからこそ、タスクを頭の中だけで管理するのは危険。可視化しておくこと、抜け漏れなく進めるための“自分なりの仕組み”を持っておくことが、現場を回すためには欠かせません。
スマホ派のタスク管理術
さてここからは、実際にどんなふうにタスク管理をしているのか、具体的なやり方について紹介していきます。まずは、土木系現場で施工管理をしてきた松岡さんの「スマホ派スタイル」から。
現場は常に情報が飛び交い、判断と行動の連続。そのなかで「どうやって忘れずに、確実にタスクをさばいていくか?」という点に、松岡さんは独自のスタイルを築いていました。



やる現場は情報の渦。その場で覚えておこうなんて無理です。
そう語る松岡さんは、スマホを“外付けの脳”として使い倒す派。現場で飛び交う指示・依頼・段取り情報を、すべてスマホのメモアプリに記録しています。
その場でメモ、即リマインド
たとえばこんな感じ
- 朝礼で言われた「〇〇の資料、午後イチで提出してね」→ メモ+14時に通知設定
- 電話で急に「明日の資材搬入の立ち会いお願い」→ メモ+Googleカレンダーに登録
- 自分で気づいたタスク(例:外構の図面チェック)→ チャットで自分に送信して備忘



僕、記憶力が弱いんですよ。だから“思い出す仕組み”をつくるのが前提です。
スマホさえあれば、紙もペンもいらず、片手でタスク管理が完結。特に現場移動の多い施工管理にとって、スマホでのメモ習慣は機動力との相性が抜群です。
“人をメモ帳として使う”高等テクニック
もうひとつ面白いのが、「会話をリマインダー代わりにする」という方法。
たとえば先輩に、
「この前の空調関係の件って、何日までにやればいいですかね?」
「ああ、あれは来週中で大丈夫。あと〇〇の資料も一緒に出してくれると助かる。」
こんな風に“軽く聞き返す”ことで、自分の記憶にも残るし、相手も再確認できる。
つまり、相手に話しかけることで“言った・言われた”の記憶のトリガーを作り、さらに情報が増えたり、優先順位が見えたりもするわけです。



上司や協力会社の人たちを“情報共有のハブ”にしておくと、実は自分もラクになります。向こうも“ちゃんと動いてくれてるな”って認識してくれるので、信頼にもつながるんです。
このやり方、タスクが曖昧になりがちな若手のうちから習慣化すると非常に効果的です。“覚える”より“覚えてもらう”くらいの感覚を持つと、現場での負担はぐっと軽くなっていきます。
紙派のタスク管理術
続いては、建築現場で施工管理をやってきた僕・武田のタスク管理術について紹介します。スマホではなく、紙とペンを使った“手書き派”のやり方です。
施工管理の現場では、「今から2時間集中して作業しよう」なんて時間、まず取れません。電話は鳴る、職人から呼ばれる、急に打ち合わせが入る。そんな“断続的な日常”の中で、どうやって重いタスクをこなしていくのか?
僕は、それを武田メモを活用しつつ、「隙間時間の読み」と「事前設計」によって解決しています。
隙間時間を“軽タスク”で潰す
現場には、一見「何もしていない時間」があります。
- 搬入の立ち会い中の待ち時間
- 職人さんの準備を待っている時間
- 昼休憩の直前の10分
このタイミングで、僕は次のような“軽タスク”を入れ込みます。
- KY(危険予知活動)の記録入力
- 写真整理やファイリング
- メール返信
- 翌日の工程チェック
- 搬出・発注のリマインド確認



“10分空いたらやるリスト”をメモ帳の隅に書いておきます。それ見て、空いたらすぐ動くようにしていました。
これが積もり積もって、1日で1時間分以上のタスク処理になることも。“隙間は貯金”という感覚が、僕の習慣です。
重いタスクは「先に場所を確保する」
図面を書く、見積もりをまとめるといった時間と集中力を要するタスクは、現場では後回しになりがちです。でも僕はそれを先にメモ帳上で時間を確保することで対処していました。
例)
「金曜日に施工図を提出」
→ 前の週の段取り欄に“拾い”
→ 月曜に“構想練り”
→ 火曜午後“集中して書く”
と先にスケジュールを押さえる



予定が入ってないから割り込まれるんです。だったら最初に“この時間は図面書く”って宣言しとけば、誰も突っ込んで来ません。
逆に言えば、その時間を死守する覚悟があるからこそ、“今は声かけないでくれ”オーラが出せるというわけです。
「次に何やろう?」と思わないように決め打ちする
タスク処理のキモは、考える時間を減らすことです。



“さて、次に何やろうか”って考えるのが一番ムダ。やることが書いてあって、それをただ順番に潰していくだけ。それが理想です。
武田メモが機能するのは、事前にすべて逆算でスケジューリングされているから。日々、“考える”より“実行する”ことに集中できるようになっているんです。
優先順位の判断軸は「重さ」と「ずらせるか」
突然、現場で新しい仕事が割り込んできたとしても、慌てることはありません。大事なのは、そのタスクがどれだけ“重い”のか、そして“ずらせる余地があるか”を瞬時に見極めることです。
「これは1日遅れても致命的じゃない」
「これは段取りを変えたら絶対に詰む」
こうした判断ができるのは、自分の中に全体スケジュールの地図があるからです。その地図をつくっているのが、僕にとっては「武田メモ」なんです。
施工管理の時間管理って、“時間そのもの”を管理してるわけじゃなくて、“タスクの位置”をどう動かすかって感覚なんですよね。この仕事って、予定通りに進むことのほうが少ない。だから、時間よりも“順番”とか“優先度”をどう調整するかがカギになる。
僕はそれを紙でやってます。全部書いて、並べて、潰せるものから叩いていく。地味だけど、一番確実なやり方なんです。たぶんこれって、“現場型のプロジェクト”を動かすってことの、本質に近いんじゃないかなって、思ってます。
大事なのは「自分に合った型」と「習慣化」
「スマホがいいか、紙がいいか」
それ自体は、実は本質的な議論ではありません。
一番大事なのは、“忘れない仕組み”を自分の中に持っているかどうか。
現場では、1日に10件以上の依頼や変更が飛び交うことも珍しくありません。そして、それらの多くは“会話ベース”で発生します。
「あ、ついでに明日コンクリ頼んどいて」
「資材、火曜の午後着でお願い」
「あの件、終わったらこっちに連絡入れてね」
これらを記憶だけで処理しようとした瞬間に、“抜け”が起きるリスクが跳ね上がります。
重要なのは「道具」より「習慣」
タスク管理の話になると、つい「紙かスマホか」という道具の話になりがちです。でも実は、それより大事なのは“どう使うか”という習慣の部分。
どんなに便利なツールを持っていても、使い方がルーズだと意味がありません。逆に、シンプルな方法でも習慣化できていれば、驚くほど抜け漏れがなくなるんです。
スマホ派なら
メモアプリに書くだけで終わらせず、
→「帰社後に見返す時間」をルーティンに組む
→ リマインダー機能で“思い出す仕掛け”を必ずつける
紙派なら
書いたメモは見える場所に固定(バインダー、机の左端など)
→ 朝イチで前日のメモを見返す
→ 書いたら線を引いて潰す“完了癖”をつける
記録したら終わりではなく、記録を実行につなげる動線ができているかが勝負です。
“自分用のルール”を決めておく
どんなツールを使うにせよ、最終的に頼れるのは自分自身の行動パターンです。そこで重要になるのが、「これだけは毎日必ずやる」という自分だけのルールを決めておくこと。
細かいことでも、一貫して続けていると、それが“抜け漏れを防ぐ仕組み”になっていきます。
例
- 事務所に戻ったら、まずメモを5分で見返す
- タスクは3色ペンで「今日中・今週中・保留」に色分け
- 急ぎ案件は、口頭で再確認 → 相手にメモを読ませてダブルチェック
こうした“自分だけのルール”をルーティンに昇華させることが、どんな現場でもブレずに対応できる“仕組み”になります。
松岡さんはスマホでタスクを管理していましたが、必ず「一言返す」「ジャブを打つ」ことで、記憶と動線の強化をしていました。僕は武田メモで1週間単位の段取りを設計し、日々“叩いて潰す”ように行動を構造化していました。
つまり、共通しているのは「ツールを習慣化していた」という点。
自分に合った型を見つけ、それを日々繰り返しながら「仕事の抜け」を減らすこと。それが、現場で生き残るための第一歩であり、成長の基盤です。
若手へのメッセージ「苦しみを仕組みに変えよう」
建築・土木の施工管理は、間違いなく“マルチタスクの最前線”です。電話は鳴り、職人に呼ばれ、図面も描かなければならない。資材の手配に書類の対応…やるべきことが絶え間なく押し寄せてきます。
新人のうちは、それに溺れて当然。でも、ここからが分かれ道です。「無理だ」と諦めるか、「どうやったら回せるか」を考えるか。そこで意識してほしいのが、“仕組みを持つ”という考え方です。
スマホでも紙でも、やり方は人それぞれ。大事なのは忘れないための自分なりの仕組みがあるかどうか。
たとえば、先輩に“ジャブ”を打ってリマインドをかける(松岡流)、未来から逆算してタスクを配置する(武田流)、隙間時間を軽タスクで埋める、書いたら必ずチェックするルールをつくる。そういった小さな工夫が、大きな違いになります。
施工管理は確かに大変ですが、だからこそ身につく力も多い。タスクを整理し、調整し、回していく力は、他のどんな仕事にも通用します。つまり、この仕事で得られるのは“業界を超えて通用するスキル”です。
今、目の前の混乱や焦りも、必ず“やり方”で乗り越えられます。“苦しかった数”が、“回せる力”の分だけ積み上がっていく。その先には、現場を指揮する自分がいて、後輩に教えるあなたがいます。
まずは、自分に合った仕組みをひとつ持つことから始めてみましょう。