誰にでも、自分にしかできない仕事や、自分だけが知っている技術やノウハウがありますよね。
もしもそれを、後輩に引き継がずに退職するとどうなるでしょう。
会社は機能を停止するしかありません。だからこそ、教育という名の技術伝承が必要なのです。
どんな人でも、初めてのことは挑戦の連続。そして必ず失敗が伴います。
でもそれを乗り越えできるようになり、それを繰り返すうちに頭が整理され、いつしかそれが「技術」と呼ばれるようになるのです。
ただ、この段階では単に「自分だけができる」レベルに留まっているだけで、組織としての再現性はありません。
本当はそれを後輩へ伝えなければいけない。そんなことはわかっているでしょう。
昭和の時代、施工管理の業務に不必要なものはほとんどありませんでした。
「やるべきこと」をやれば、それでよかった。全ての業務が建物を建てることに直結し、無駄が少ない時代でした。だから「見て学ぶ」が成立したのです。つまり、伝えなくても伝わった時代です。
しかし時代は進み、多くの失敗から生じた書類や、チェックリストが膨大に増えました。仮にこの現場に該当しないことでも、「該当しない」という書類まで必要になることも。
当然品質は向上し、新しい資材や工法も絶えず登場、業務は多様化し、膨張してきたのです。
結果、新人はまずこの膨大な業務を「こなす」ことから学び始めます。意味がないような業務も「全て重要」と言われます。
結局、先輩も後輩も、お互いに余裕が失っているのです。
ゆえにコミュニケーションは減り、若者の技術は不足し、先輩の中の「自分だけにしかできない仕事」を増やすことを助長してきました。このままでは、本当に技術は徐々に失われ、企業の機能は衰退してしまいます。
だからこそ、自分ができることを整理し、言語化することが重要なのです。ただ自分ができるだけでは不十分で、その知識を言葉にして伝えなければ、本当に失われてしまいます。
とかく技術屋である施工管理は、誰しもがわかるように順序だてて説明できる「言語化」が苦手だと感じます。
ただ、これまで話してきたように、このままでは本当に技術が失われます。
苦手とか、難しいとか言っている場合ではありません。素人でも簡単に理解する伝え方や、理解しやすい教え順を本気で考え、工夫し実行するしかないのです。
この情報化時代では、頭の中を表現するスキルが求められます。
できることが価値なのではなく、共有することが価値。
まずは次世代が、自分なしでも業務を遂行できるよう、言語化しましょう。再現性のある形で残していきましょう。できないなら、そのスキルを鍛えましょう。