【建設現場/働き方改革の事例】現場監督のリモート化

本記事では、現場ラボが行った現場の働き方改革11の施策の中の事例【現場監督の半リモート化】について紹介します。

施策の概要
  • 初期導入コスト:310,000円程度
  • 必要なもの:モニター、モニター架台、接続、パソコン、周辺機器
  • 時間:720時間の削減
  • コスト:1,850,000円程度削減

おそらく「働き方改革」といわれると、皆さんが思い浮かべるものの上位に、この「リモート」が上がってくると思います。コロナ禍で加速したこの新たな働き方は、もう耳なじみの深いものになりました。

ただ建設業は、必ず現地に行かなければ作業はできない。そういう常識にとらわれて、一歩踏み出すことを拒んできました。その牙城を崩しました。

取り入れた結果、基本的に残業はなく、職人が帰るとほぼ同時に現場を閉めて帰宅することが、工期の最後まで実現できました。実感としても大きな成果です。

ちなみにこの取り組みを計画する上で、ある場面を想定していました。以下の通り。

  • まだ未熟な若い所長が一人で、もしくはもっと若い後輩と運営している現場
  • 現場は任せられるが、施工図や予算管理などを同時に任せると不安な若手所長
  • そんな現場を能力のある監督が、リモートで3~4現場を同時にバックアップ

これを叶えるための仕組みとして、半リモートを立案したのです。

当然、実現のためには、しっかりとした準備が必要。リモート側にある程度の装備が必要なのはもちろんのことですが、もっと前にすべきことがあります。

何よりも重要な準備は、「現場でなければできない仕事」と、「デスクワークだけで完結する仕事」に二分することから始まります。これができれば、取り組みは成功したようなもの。単純な話、デスクワーク側だけをリモート対象とするのです。

リモート側の僕が実際に行っていた主な業務は以下のようなもの。

  • 全施工図の作製、チェック、完成
  • 工程表の作成とそれに伴う打合せ、日程調整
  • 安全書類をはじめとする書類整理、竣工書類の作成
  • IT・WEB・業務効率化関連の全業務

もちろんそれだけではなく、現地での点検業務なども行っていました。

本当は完全にリモートを行う気持ちでしたが、現地確認を完全に自動化するためには、導入する機器や協力してもらうスタッフのハードルが高く、半分だけの取り組みという、半ば諦めのような形でスタートしました。

ところが運用してみた結果、実は完全リモートよりも半リモートの方が実用性が高く、働き方改革にはマッチしているということがわかりました。後で述べますが、これが非常に面白く感じた部分です。

それでは【現場監督の半リモート化】について、基本的な使い方とメリットやデメリット、そして応用的な使い方までお話していきます。

目次

導入の基本

以前に紹介したクラウドによるデータ共有、現場のライブ配信、会議・打合せのZoom化は、これを行う上では必須。これらなしには実現できない仕組みです。これらをフル活用して、ようやくリモート化は成り立つのです。

クリアすべき問題点はいくつかあります。例えば、現地スタッフとのやり取りはどうするのか。現場の状況を把握するのはどうすればいいのか。現場の職人さんとはどう打ち合わせをするのか。これらの問題点を解決するために、以前までの3つの施策が必要になるのです

導入に当たって、大切な共通認識があります。それは「責任の所在は現場にある」ということです。デスクワークで完結することは基本リモート側で処理します。ただし、法律上も実際にも、大切なのは現場。この原則は崩せません。感覚はいつも「現場での業務を、リモート側が減らしてくれている」でなければいけないと心得ましょう。

メリット

  • 現場への移動時間が削減され、事故や感染症リスクもなくなる
  • 現地スタッフのデスクワークが圧倒的に減る
  • リモート側も電話などが少ないため、集中が途切れず効率が良い
  • 人間関係の苦手な人でも、大きな価値を生み出せる
  • 一人現場の時にでも、現場を知る人がほかにいるため、交代休みを取りやすい
  • 現場が遠いほどメリットが大きくなる

デメリット

  • 分業意識が浸透していないと、お互いの仕事の不満を持ちやすい
  • リモート側のIT知識がある程度必要になる
  • 現地とリモートに温度差が生まれやすく、チームワークが作りづらい
  • 慣らすために、定期的にZoomミーティングを行うなどの必要がある

応用的な活用方法

  • Zoomを活用することで、毎日の職長会議へリモート側も参加できる
  • 監理者とのリモート検査を中継や記録することも、リモート側が協力できる
  • リモート側は法的に責任を負えないが、いくつもの現場をかけ持つことが可能
  • 現地からリモート側に質問をしたり、図面を表示させたり近未来の働き方ができる

ポイントまとめ

導入する前と後で大きく変わった印象は、「現地スタッフが休みを取りやすくなる」ことです。完全リモートであればそうはいかないかもしれませんが、少なくとも現場を把握しているキーマンが、現地とリモートで2人以上存在することになります。

ということは、現場スタッフが休みを取りやすい環境を簡単に作ることが可能になります。ただ、交代交代にとりすぎると、分業が崩れてしまうことがあるため注意が必要です。

また、導入段階で現場仕事とデスクワークの整理整頓、棚卸しができることになります。仮にリモート運用するつもりでないにしても、デスクワーク側は外注化することができるとも言えます。これは働き方改革にはとても大切な部分だと考えます。

ただZoomと同じく、一番の導入ハードルは「気持ち」です。

ベテラン層には現場主義の常識がかなり根深く浸透しており、リモートに対する拒否反応が大きいと感じます。そんな時には、「現場の人と電話をしながら指示出したりしたことありませんか?それは立派なリモートですよ。」と言ってあげましょう。

仕組みが出来上がれば、電話という「声」しか届かない状況よりもはるかに確実なやり取りが可能なのです。電話でできるなら、今の方がもっと良い管理ができるでしょ?と説得するのが良いかと思います。

リモート側は、1現場を終わらせるまでは強い意志が必要です。前半戦では活躍しますが、後半は現場の方が忙しくなります。現場ってそういうもんですよね。そうなると、手伝ってあげたくなるのも現場マンならでは。

でも絶対に現場を手伝わない。その徹底した意識を持つことで、違う現場を救うことにもつながります。これは、必ず取り組んでほしい施策になります。かなりの効率化が実現でき、何よりもお互い楽になる実感があります。ぜひご検討ください。

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