建設業界が深刻な状況に晒されていることを知っていますか?
建設業界は、なかなか若者が根付かず、業界の高齢化が進んでいます。立派な技術をもつ高齢者が引退していくのと同時に、その技術は若者に継承されることなく失われていくという深刻な状況です。
このままでは、建設業界は成長しないどころか、悪い方へ進んでいってしまいます。どうにかして、若者が根付いてくれるような業界に変えていかなければなりません。
そのために必要なのは、教育です。
本記事では、若手が育たないことに悩みながらも、どうにかして建設業をよりよいものにしていきたいと考えている、中堅・ベテランの方にこそ読んでいただきたい内容となっています。
突然ですが、教育にどのくらいの時間を掛けていますか?
大した時間を割いていないのにも関わらず、「最近の若者はちっとも仕事ができるようにならない」などと文句を言ってるのであれば、その考え方に問題があります。
教育とは、時間がかかるものなのです。
人手が足らないからと新しい人を入れても、その新人が育たなければ忙しさは変わりません。
今回は、若手を育て上げるには時間がかかって当然というお話になります。 若手教育をしていく上で、もっておいて損はない考え方ですので、ぜひ最後までお読みください。
若手教育の課題を知り、時間を掛けて確実に育てよう

若手教育でやりがちな間違い
戦力化を目指して行う若手教育において、多くの企業がやりがちな間違いは「明確なゴールがない」ということです。
そもそも戦力化とは何を指すのか、成長したといえるだけの明確な基準がないと、そもそも戦力という言葉自体が曖昧なものになってしまいます。
営業実績のような数値で頑張りが分かる場合のゴール設定であれば容易かもしれませんが、建設現場では数値として個人の実績を表すことは難しい場合がほとんどでしょう。
しかし、難しいからといって設定しないのは間違いです。
明確な目標がないがために、だらだらと教育をしてしまう、達成したのかが分からない、上手くいかないと感じるという負のスパイラルに陥ってしまいます。
そうならないためにも、教える側も教えられる側も明確に成長しているとわかるような目標を考えるとよいでしょう。
建設業界の若手教育の現状と課題
建設業界では、現場が忙しいという理由から若手教育がおろそかになっている傾向があります。
しかし、忙しいからこそ戦力になる若手を育てて、自分たちが今の忙しさから脱却できるできるように努力するべきなのです。
会社では社会人としての基礎知識だけ教えて、技術に関する教育は現場でしてもらおう、なんていうのはあってはいけないことだと思います。
また、建設業界でやってしまいがちな間違った教育に、「教えてるつもりの教育」があります。これに値するのは、「簡単な計算」や「記録を写す」などといった誰にでもできるような作業を仕事を減らすために振るという行為です。
これらの作業は実務ではなく、成長には繋がりません。新人さんは雑務係のアルバイトではありません。
教育というのは、雑に仕事を振ることではなく、技術や知識を相手に身につけさせるように導くことです。
新しい知識や技能は、専門的なものであればあるほど、すぐに身につくものではなく、習得には時間がかかるものと理解して、長期的なビジョンをもつことが必要です。
【若手教育は長距離走】若手を育成するために心しておくポイント

若手のレベルに戻って教育しよう
「ゴール設定」にもよりますが、若手社員を成長させ、戦力化するには時間がかかります。
教育係を任されたベテラン社員にとっては簡単と感じることも、若手社員にとっては全てが初めての経験です。
実際に、私が新人の頃の研修でも、「他人のことを考えるのは大事」、「生きるって大変」など精神論や思考的な部分に加え、「電話の取り方」や「名刺交換の仕方」などといった社会人としての基礎知識から学ぶというものでした。
「社会人なのにこんなことも知らないのか」と叱るのではなく、たとえゼロからのスタートだとしても、若手社員のレベルまで思考を戻して、丁寧に教えるべきなのです。
建設業界では、社会人のマナーに加え、技術に関する部分でも学ぶことが多いと思いますが、これも同じです。
「〇年目なのにこんなことも知らないのか」という姿勢はやめて、若手社員のレベルに合わせて教育することこそが教育係の使命なのです。
新しい世界に飛び込み、早く仕事を覚えたい、頑張りたいという若手の前向きな気持ちを折らずに、時間を掛けてしっかりと新人を育てることが教育係の責務なのです。
知識よりも大切なことがあることを忘れるな
建設業は技術職です。知識や技術がなければ成り立たない職種です。
しかし、未来につなげていくためには、きちんと使える技術を身に着けさせる必要があります。頭ではわかっている、知識としてもっているだけではいけないのです。
これらを木に例えてみましょう。木は種があり、根っこがあり、幹があり、枝葉があります。
知識や技術というのはどれにあたるでしょうか?
知識や技術といった具体的なものは枝葉にあたります。枝葉がたくさんある木も、幹がしっかりとしていない木は倒れてしまいます。根幹がしっかりとしていてこその枝葉なのです。
では、幹とは何にあたるのでしょうか?ここでの幹とは、未来に向けての目標、気持ちです。
根っこの部分は人間性や性格といった生まれ持ったもの、種とは志のはじまり、目指そうと思ったきっかけを指すのではないでしょうか。
種や根っこの部分は今から簡単に変えられるものでは無いのですが、幹の部分はいかようにも育てられるはずです。
そして、若手教育をする今、時間を掛けてしっかりと育てるべきなのです。
まとめ

若手教育が会社にとって、業界にとって、想像よりも重大な任務だとおわかりいただけたでしょうか。
これだけ重大な任務にも関わらず、「時間をかけて育てる」ことができない組織が多いのが現状です。
若手の教育には時間を掛けるだけの価値があります。
「若手社員が思うように成長しない」と嘆いている背景には、短期間で結果を求めすぎていたという原因がある可能性があります。
若手の教育は時間がかかります。今教えたからと言ってすぐに根付くものではありません。
是非、頭の片隅に留めておいてください。