デジタルトランスフォーメーション、略してDXは、様々な業界で業務を効率化し、革新をもたらしています。しかし、職人業界ではこのDXがなかなか進まないとされています。本記事では、職人の仕事がデジタル化に適していない理由と、それでも探求すべきデジタルの可能性について詳しく見ていきます。
職人の仕事は主に「手作業」で、力仕事が多いため、パソコンを使った仕事とは異なりデジタル化が難しいとされています。しかし、技術が進む中で、デジタルツールの導入による効率化のチャンスも増えてきています。この記事では、なぜ職人業界のDX化が遅れているのか、そして今後どのようなデジタルツールが役立つかを掘り下げます。
この記事を書いた人
株式会社 RaisePLAN 代表取締役
武田 祐樹(たけだ ひろき)
【これまでの活動】
- 総合建設業に17年在職後、独立起業。
- 建設現場の生産性向上支援や施工管理の教育支援を展開。
- 中小企業デジタル化応援隊事業(中小企業庁)のIT専門家。
- YouTubeや音声配信、Instagram・メールマガジンなどで情報発信を行い、電子書籍の出版やオンライン講師、オンラインセミナー活動に積極的に取り組む。
- 建設業の現場効率化の仕掛け人としてAbemaPrimeに出演(2023年3月)。
職人業務のDX化が困難な理由
職人の仕事は大きく分けて、体力を要する現場作業が中心です。デスクワークと比べると、その多くが「体を動かす仕事」であり、デジタル化しにくい性質を持っています。具体的には、職人の仕事は約9割が体力仕事で、残りの1割が知的作業といった割合です。これに対し、施工管理など他の業種では、知的作業の割合が高いため、DX化が進みやすい状況にあります。
つまり、職人の仕事がDX化で困難な理由の一つは、物理的な作業が大部分を占めているためです。たとえば、デジタル技術で設計や計画は効率化できても、実際に材料を加工したり、具体的な施工を行う作業は、人の手が不可欠です。また、現場の状況に応じた即時の判断や繊細な技術も求められ、これらは容易に機械に置き換えることができません。
DX化による効率化の可能性
職人業界におけるDX化は、その固有の課題により進展が遅れていますが、それでも技術の進化は新たな可能性をもたらしています。
先程も述べたように、職人の仕事は主に物理的な活動が中心であり、これをデジタル技術で置き換えるのは容易ではありません。しかし、デスクワークに関連する部分—例えば見積もり作成や計画書の作成など—はDXによる効率化が可能であり、これにより全体の作業負担が軽減され、現場作業に集中できる時間が増えることでしょう。
また、新たなデジタルツールの開発とともに、AR(拡張現実)やAI(人工知能)などの技術を活用した作業支援が職人の仕事を変革していきます。これらの技術は、材料管理や作業の最適化を効率的に行う手助けとなり、精度の高い施工を可能にします。
このように、職人業界は徐々にですが確実にDXの恩恵を受け始めており、将来的にはより多くの職人が技術のサポートを活用することで、効率的かつ効果的に作業を進めることが期待されます。
まとめ
職人業界におけるデジタルトランスフォーメーションは、多くの課題に直面していますが、技術の進化はこれらの課題を乗り越えるための新しい道を開いています。物理的な作業が主体であるため、職人の業務を全てデジタル化するのは難しいかもしれませんが、見積もり作成や計画書の作成など、デスクワーク関連の業務はデジタルツールによって効率化されています。これにより、職人はより創造的で専門的な現場作業に集中できるようになります。
さらに、ARやAIのような先進技術が作業支援ツールとして導入されることで、職人の作業はより正確かつ効率的に行われるようになります。これらの技術は、業務プロセスの最適化と精度の向上を支援し、職人が直面する物理的な課題を解決する手助けとなります。
このように、デジタルと職人技の組み合わせによって、職人業界は新たな発展段階へと進むことが期待されます。技術革新と協力することで、職人の仕事の質も向上し、全体の生産性が増すことでしょう。