建築の現場で突然トラブルの連絡が入ったとき、あなたならどう動きますか?「壁にひびが入った」「雨漏りしている」「設備が壊れた」。そんな現場対応は日常茶飯事でありながら、毎回状況は異なり、経験が浅い人ほど「何から手をつけたらいいのかわからない」と戸惑いがちです。
この記事では、そうした場面で“最初の一歩”を間違えないためのトラブル対処の4段階フレームをご紹介します。応急処置から原因の見極め、根本的な解決、そして現実に即した折衷案の提案まで。どの段階も現場で本当に役立つ視点ばかりです。
この思考法を知っておけば、たとえ予期せぬトラブルが起きても、慌てることなく、段階を踏んで最適な対応ができるようになります。先輩から口頭で伝えづらい経験則も、この記事を通じて共有できます。
現場の判断力を磨きたい方、若手に対応の型を伝えたい方、自信を持ってお客様に説明できる技術者になりたい方へ。この4ステップが、あなたの実務に確かな指針を与えてくれるはずです。
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株式会社 RaisePLAN 代表取締役
武田 祐樹(たけだ ひろき)
【保持資格】
- 一級建築士
- ー級建築施工管理技士
- 一級土木施工管理技士
【これまでの活動】
- 総合建設業で施工管理として17年勤務後、独立起業。
- 建設現場の生産性向上と施工管理の教育支援を展開。
- 中小企業庁「デジタル化応援隊事業」のIT専門家。
- YouTubeチャンネル『建設業を持ち上げるTV』を運営し、登録者1.2万人を獲得。教育特化長尺動画が8万回再生を突破。
- Instagramや音声配信など多メディアで情報発信。
- 電子書籍出版やオンラインセミナーを精力的に実施。
- 2023年3月、AbemaPrime出演で現場効率化施策が注目。
記事の監修

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武田 祐樹(たけだ ひろき)
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- 2023年3月、AbemaPrime出演で現場効率化施策が注目。
第1段階|応急処置:まずは「今」を止める
現場でトラブルが発生した際、まず最初に行うべきは「被害の拡大を止めること」です。たとえば、「雨漏りが発生した」と連絡を受けて現場に駆けつけたとき。多くの方が、すぐに屋根の修理を考えてしまいがちですが、それは後回しで構いません。まず優先すべきは今起きている被害をこれ以上広げないことです。
雨漏りを例にした対応の流れ
- まず確認すること
- 水がどこから落ちているか(天井のどの位置か)
- 水がどこに落ちているか(床・家具・電気機器など)
- 水量やスピード(ポタポタか、ザーザーか)
- すぐに行う応急処置
- 水を受け止めるためのバケツや洗面器を設置
- 床材や絨毯などが濡れないようにビニールシートや新聞紙を敷く
- 落ちてくる水が拡散しないように、水の流れ道を作って誘導(バスタオルを折って置く、テープで簡易的に仕切る など)
- 避けるべき対応
- いきなり屋根に登って原因を見つけようとすること(特に雨天時は危険)
- 見た目を優先して、水をふき取るだけで済ませようとすること
この段階での目的
この段階で求められるのは、「被害をこれ以上拡大させないこと」です。つまり、濡れてはいけない部分が濡れないように守る、次の対策まで持ちこたえるための「つなぎ」の処置を行うことです。
第2段階|原因究明:なぜ起きたのかを冷静に観察
応急処置によって一時的にトラブルが落ち着いたら、次に取り組むべきは「原因の特定」です。ここで焦ってはいけません。今起きている現象の“本当の原因”を突き止めることが、この後の正しい修繕提案につながります。
雨漏りを例にした観察のステップ
- 天井裏の確認
- まずは漏れている真上の天井を開けて、濡れている場所や配管の破損を確認。
- 水がどこから伝ってきているか、梁や天井材の濡れ具合で推定します。
- 重力の法則を意識
- 水は上から下へ流れる。雨漏りの調査は「下から上へ」たどっていくのが基本。
- 水滴の跡や染みの方向、壁や柱の水の筋をよく観察し、屋根や上階の水回りへと絞り込んでいきます。
- 屋根の状態チェック(屋外)
- 雨が止んだ後、実際に屋根に上がって目視確認。
- 板金の継ぎ目が甘い箇所、錆びた部分、穴が空いている箇所がないか細かくチェック。
- 異常が見つかってもすぐに修理はせず、まずは仮説を立てて段階的に確認。
原因究明で最も大切なことは「一気に直さない」こと。
複数の原因候補(例:継ぎ目の緩み、穴、配管破損など)があっても、それをすべて同時に直してしまうと、本当の原因が分からなくなってしまいます。
- まずは一つ仮説を立てる(例:この穴が原因かもしれない)
- それだけを修繕して、その後の再発状況を確認する
- それで雨漏りが止まらなければ、次の仮説に進む
このように「段階的に原因を潰していくプロセス」が、次の類似トラブルへの対応力にもつながります。
第3段階|根本解決:将来にわたる安心を目指す
原因の特定ができたら、次に目指すのは「再発を防ぐための抜本的な対応」です。ここでは単なる修理ではなく、お客様が将来にわたって安心できる状態をつくることが目的となります。
例:屋根の継ぎ目が原因だった場合に考えるべきこと
雨漏りの原因が屋根の継ぎ目にあった場合、単に1箇所をコーキングで補修するだけでは十分でないケースもあります。もし屋根全体に継ぎ目の緩みが見られるようなら、「屋根の全面的な締め直し」や「板金の葺き替え」といった、より包括的な対応が必要になる可能性があります。
たとえ一時的に漏水が止まっても、次の大雨や強風で再び漏れるリスクは十分にあります。こうした将来の不安要素も見据えたうえで、根本的な解決策を提案することが大切です。お客様にとっては「今すぐ直った」よりも「この先も安心して暮らせる」ことの方が重要なのです。
この段階で大切なのは「提案の質」
この段階で大切なのは「提案の質」です。単に「直します」というのではなく、なぜその工事が必要なのか、どうすれば再発を防げるのかを、論理的に組み立てて説明することが求められます。
提案の基本は、以下の3要素をかけ合わせることです。
たとえば、次のように整理して伝えます。
- 「今回の雨漏りは、屋根の継ぎ目の劣化が原因で発生しています。現場を確認したところ、同様の劣化が他の継ぎ目にも見られる状況です。」
- 「このまま放置すると、今回とは別の箇所からも雨漏りが起きる可能性があります。」
- 「そのため、継ぎ目全体の補修、あるいは屋根の葺き替えをご提案いたします。」
このように、事実→リスク→提案という順序で説明することで、専門知識のないお客様にも納得してもらいやすくなります。信頼される技術者ほど、「何をするか」ではなく「なぜそうするのか」を丁寧に伝えているものです。
なぜ「根本解決」が重要なのか?
「根本解決」が重要な理由は、お客様の最大の不安が「またすぐ同じトラブルが起きること」だからです。応急処置や部分的な補修では、その場しのぎにはなっても、長期的には安心して暮らすことができません。
そこでプロとして大切なのは、問題の全体像を捉えたうえで、なぜ根本的な対策が必要なのかを、根拠をもって丁寧に説明することです。これにより、お客様は「なるほど、ここまで見越して提案してくれているんだ」と納得し、信頼を寄せてくれるようになります。
注意すべきなのは、「根本解決=高額工事」ではないということ。重要なのは金額ではなく、「なぜ今それが必要なのか」「それをすることで何が防げるのか」という説明の質です。納得感のある提案こそが、プロフェッショナルの信頼を築く鍵になります。
第4段階|折衷案の提示:現実的な選択肢を用意する
理想は根本的な解決ですが、実際の現場では「費用がかかりすぎる」「すぐには工事できない」といった現実的な制約が出てくることも珍しくありません。そこで重要になるのが「折衷案(設中案)の提示」です。
折衷案とは
折衷案とは、「理想的な全面修理」と「現状維持で何もしない」という両極端の選択肢の中間に位置する、現実的で効果的な対応策のことです。限られた予算や工期のなかでも、できる範囲で最善の対応をし、お客様の不安を和らげる役割を果たします。
たとえば、「屋根全体の葺き替えは難しいけれど、今回は雨漏りしている部分だけを応急的に補修する」といった対応や、「天井の張り替えは全体的に行うのが理想だが、目立つ一部分だけ交換して見た目を整える」といった方法が挙げられます。
重要なのは、「今回はここまでやり、今後はこう進めていきましょう」と段階的な対応を計画的に提案する姿勢です。このように、お客様の状況に寄り添いながら、リスクも踏まえた上で納得のいく選択肢を示すことが、信頼関係の構築にもつながります。
信頼を築くカギは「誠実な提案」と「段階的な判断」
折衷案を提案する際に最も大切なのは、「これは完全な解決ではない」という事実をきちんと伝える誠実さです。
「今回はこの部分だけを直せば、しばらくは安心できますが、将来的には他の箇所で同様の問題が起こる可能性もあります」と、リスクを正直に説明したうえで、「その場合は次の段階で〇〇の工事を検討しましょう」といったステップを明示することが、お客様との信頼関係を深めることにつながります。
トラブル対応に必要なのは「冷静さ」と「段階思考」
建築現場では、トラブルは避けられないもの。しかし、対応を間違えば信頼を損ない、企業としての信用にも直結します。
だからこそ、「応急処置→原因究明→根本解決→折衷案」という4段階のフレームを頭に入れておくことで、どんな場面でも冷静に、段階的に最適な対応ができるようになります。
重要なのは、完璧を急がず、目の前の課題をひとつずつ誠実に解決していく姿勢です。それこそがプロとしての信頼を築く力になります。現場では、忙しさのあまり後輩に細かく教える時間が取れないことも多いですが、こうしたシンプルで再現性のある思考法を共有するだけでも、若手の行動の指針となり、大きな成長を後押しします。
この4段階のフレームを通して、建築現場の対応力とチーム全体の底上げを目指しましょう。今後も実践的で現場に役立つ情報を発信していきますので、ぜひご活用ください。
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