「先輩から受け取ったものをそのまま後輩に伝える」だけの教育方法に頼っていませんか?実はこの方法、後輩にとっても先輩にとっても大きなマイナスとなる可能性があります。
本記事では、先輩から教わったことをそのまま後輩へ伝えることが教育ではないという重要な点について掘り下げます。具体的には、この誤った教育方法が会社に与えるリスクと、それを避けるための正しい教育方法について解説します。
この記事を読むことで、後輩の成長を促し、会社全体の発展に繋がる効果的な教育方法を学ぶことができます。後輩の教育に携わっている方、会社の未来を見据えて教育方法を改善したい方は、ぜひ最後までお読みください。
- 会社の存続が危ぶまれる教育とは
- これからの教育方法について
この記事を書いた人
株式会社 RaisePLAN 代表取締役
武田 祐樹(たけだ ひろき)
【これまでの活動】
- 総合建設業に17年在職後、独立起業。
- 建設現場の生産性向上支援や施工管理の教育支援を展開。
- 中小企業デジタル化応援隊事業(中小企業庁)のIT専門家。
- YouTubeや音声配信、Instagram・メールマガジンなどで情報発信を行い、電子書籍の出版やオンライン講師、オンラインセミナー活動に積極的に取り組む。
- 建設業の現場効率化の仕掛け人としてAbemaPrimeに出演(2023年3月)。
先輩から教えられたものをそのまま後輩に伝える教育方法が危ない理由
会社の存続が危ぶまれる教育とは「先輩から教えられたものをそのまま後輩に教える」というものです。
なぜそれがダメなのかという理由は以下の2つになります。
理由1:知識伝達における問題
皆さんが誰かに何かを伝えようと思った時に10の情報を伝えたとしましょう。
伝わった側の方は本当に10全てを残さず受け取っているでしょうか。
数字的な根拠はありませんが、受け取っているのは8ぐらいなのではないかと思うのです。なかなか自分の気持ちというのを全て相手が理解できるほどに説明するという能力は教育者でもない限り難しいのです。
伝えるということはそう簡単なものではないですし、相手の言っていることを理解することもそう簡単なものではありません。だから技術の受け渡しというのは必ずうまくいくというものではないということなのです。
先輩から教えられたものをそのまま後輩に譲るときにはいくらかは目減りしています。知識量・経験値・技術力を10渡そうと思ってもそもそもここには8しかないということなのです。
さらには、受け取る側の理解能力によってはそれが5にも4にもなってしまう可能性があるということです。
もう一つ上の先輩から渡されている場合、自分の情報はもしかしたら5かもしれないのです。この5の情報を後輩に渡そうとしている可能性があるのです。そうなると後輩が渡される情報量はおそらく3とか2のレベルの話なのです。
こういう風にして情報の受け渡しというのは簡単に上手くいかないもので、受け渡し切れないもの、そして受け取りきれないものというのがお互いに発生していき、脈々とレベルが下がっていくということがあり得るということです。
全然伝わっていなかった経験、皆さんないですか?
“あれこれ前も言っただろう”みたいなことです。
これは後輩たちが受取り切れていない部分です。
僕の言っている10が8になるという赤信号の状態ということになります。
理由2:先輩から受け継いだ知識が古臭くなっている可能性がある
あなたに1番よく教えてくれた先輩はいくつ上でしょうか?
仮に、10年先輩の人から教育を受けたとしましょう。そして、あなたがこれから教えなければいけない後輩はいくつ下でしょううか。
先輩から教えられた10年前の知識を今、自分は渡されました。そしてその知識を10年後後輩に渡すということになります。
知識をリレー方式で渡したということになると後輩が受け取った知識は何年前の知識になるんでしょうか。
20年前の情報を受け取っているということになります。今あなたが後輩に教えようとしている知識というのは30年前40年前の技術力というものなのかもしれないというふうに考えたことはないですか?
今あなたの教えているそのやり方がもしも当てはまっているのであれば、それは今すぐに改善しないと会社として存続ができなくなるようなレベルの下がり方をしている可能性があるということです。
“後輩がなかなか育ってこないな”とか“うちの会社レベルダウンしているな”と思っているのはもしかしたらこの辺が原因なのではないでしょうか。
これからの教育方法について
会社の存続が危ぶまれる教育の打開策として、どのような教育方法を取ればいいのかを説明します。ここでは、「知識伝達における問題」を打開する教育と、「先輩から受け継いだ知識が古臭くなっている可能性」を打開する教育の2つの観点から考えてみましょう。
「知識伝達における問題」を打開する教育
先輩から受け取った知識が自分の中で目減りし、それを後輩に伝えたときにはさらに減少する、という現象はよくあります。例えば、先輩から10の知識を受け取ったとします。しかし、自分の中ではそれが8になり、さらに後輩に伝えたときには6になってしまう。知識や技術は確実に目減りしていきます。
では、この問題をどのように打開すればよいのでしょうか。その答えは、あなたの経験を加えることです。
自分が先輩たちにどのように指導を受けたか、現場でどのような失敗を経験したか、業務においてどのような反省点があったかといった「負の経験値」を、先輩から受け継いだ技術力に付加して後輩に伝えることが重要です。
あなたの失敗談や教訓を後輩に共有することで、「こういう場面ではこう失敗した」という具体的な状況が記憶に残り、同じミスを繰り返さないようにすることができます。これが、企業が成長していく上での最も重要な土台となります。
失敗から学ぶこと、そしてその失敗を再発させないための防止策を繰り返し伝えることで、企業は大きくなっていくのです。だからこそ、あなたの失敗談や経験は企業にとって非常に貴重な宝物なのです。この積み重ねが、いわゆる「技術力」となるのです。
先輩から受け継いだ知識・技術にあなたの失敗談を加えて後輩に伝えることが、まずは一つ目の効果的な教育方法です。
「先輩から受け継いだ知識が古臭くなっている可能性」を打開する教育
先輩から受け継いだ知識を後輩にそのまま渡すと、20年のギャップが生じることがあります。では、そのギャップをどのように打開すれば良いのでしょうか。
答えは、今あなたが実践している最先端の技術を教えることです。
既に使われていない古い知識や技術を後輩に伝える必要はありません。むしろ、今考えうる最先端の技術を自信を持って後輩に教えることが大切です。古い知識を教えることは、後輩に無駄な情報を渡しているのと同じことです。
今の時代に即した最新の技術や方法を教えることで、後輩は時代の波に乗ることができます。あなたが考える現代の最先端の方法が、これからのスタンダードになるのです。先輩たちが教えてくれたことをそのまま教える必要はありません。
技術力は、自分の中にあると自信を持ってください。この自信を持った上で、今あなたが実践している方法を後輩に伝えることが大切です。それが今のトレンドであり、時代に即した方法なのです。
だからこそ、あなたの感じていることや実践していることを全て含めて教育として後輩に伝えてください。それが必ずしも先輩と同じやり方である必要はありません。同じ教え方である必要もありません。
あなたが「こうやっていくべきだ」と思っている方法、もしくは既に実践している方法が正解なのです。
まとめ
先輩から教えられたものをそのまま後輩に渡すということは会社を潰そうとしている行為だと考えます。
教育をする上で大切なことは、自分自身が経験してきた失敗や反省点を共有し、最新の技術ややり方を後輩に伝えること、そして自信を持って伝えることです。しかし、先輩から教えられたものをそのまま後輩に渡すことは危険であり、自分で情報を収集し、咀嚼し、自信を持って伝えることが重要です。後輩はあなたの何倍もの情報量を持っている可能性があるため、自分が持っている知識と情報をしっかりと整理し、後輩と向き合って伝えることが必要です。
時代の変化にも対応しつつ、しっかりと自分のやり方を研究していくことで、後輩とともに成長することができます。今あなたが感じている事が今の仕事のやり方なのだと自信を持ってください。その自信を含めたうえで後輩に渡してあげてくれれば底上げになっていくと思います。しっかりと頭で考え、しっかりと後輩と向き合っていただければと思います。
また、僕の運営する現場ラボでは、忙しい現場の先輩たちに代わって若手教育を行うサポートをしています。お悩みを抱えている方はぜひご相談ください。