2024年の残業規制に伴って、多くの建設会社では働き方改革の取り組みを模索しています。そんな中、僕の取り組みを知っていただいた法人さんからご相談をいただくケースが増えてきました。
まずは将来のビジョンを聞き、現在考えていたり既に取り組んでいるものをお聞きするところから始まります。結局はうまくいかないから僕に相談が来るわけですが、話を聞くと多くの共通点があるのです。
正直なところ、「それでは絶対にうまくいかないだろうな」と感じる施策がほとんどです。今回は、その施策の一体何が良くないのか、そしてどう考えればいいのかをお話しします。
その働き方改革、全然違う!

相談をいただいた内容に以下のようなものがありました。
- 設計事務所のケース:将来を見据えてデジタル化を進め、BIMを導入
- 建設会社のケース①:全社員にタブレットを導入し、アプリを用いて連携を強化
- 建設会社のケース②:残業状態を把握するため、勤怠管理ツールを導入
これはほんの一部ですが、共通点を見出すことはできます。それは何かというと【仕事が増えている】という点です。各社の言い分は「最初は業務が増えても、将来的には楽になっていくから、今は仕方がない」というものでした。
ですが、それは会社の都合であり、社員にとってみるとそんなこと全く関係ありません。今の時代、そこまで会社への帰属意識が高い人はいません。仮にいたとしてもそれは稀です。全社一丸になってというワードも、今は通用しないと割り切らないといけないのです。
なぜならみんな忙しいのです。現在、忙しい真っ只中だからこそ効率化を進めなければいけないという岐路に立たされている状況だと、まずは理解しましょう。その考えから、改革は始めなければいけないのです。
働き方改革の第一歩は、便利ツールの導入ではダメなのです。一時的にでも仕事が増えてしまうことは、許容できないのです。だからこそ、まず始めるのは「減らす」施策です。
まずは今の業務を一度減らすことから始めて、それが浸透して楽になったという実感を持ってもらうことが先決。「明るいうちに帰れるようになった」「なんか余裕が出てきたな」そんな実感を持ってもらうようにすることが第一歩なのです。
タブレットを導入したとして、アカウントはどう管理するのか、使い方はどうやるのか、アプリのダウンロード方法、課金体制はどうするのか、そういう細かい部分が見えていません。それが大きく業務を圧迫するのです。
結果として、誰もついてこない。そんな状況になって頓挫してしまうのが一番多いパターンです。だからこそ、効率化のスタートはアナログ作業であるべき。ではどういう順で進めるのかの王道を伝えておきます。
効率化のスタート手順

効率化の手順を説明します。
①今の業務を主要パターンに分け、それぞれで細かい作業まで列記します。
例:現場序盤、中盤、終盤で分けて業務を列記する
②それぞれの所要時間を書き出し、日数を掛けて時間を割り出す。
例:朝礼10分×工期300日×参加人数3人=150時間
③各業務がその職業にとって本質かどうかをマーキング。
例:施工図をチェックするのは本質、描くのは誰でもよい
④本質じゃない作業のうち、所要時間の多いものから「不要、外注可能、半減」などに分類。
⑤不要は削除、外注可能なら模索、半減は保留。
この5つの手順によって、まずは現状の仕事量を削減していくのです。そして生き残ったもので本質ではないものは、自動化を模索します。新規入場者教育を動画にするなどが良い例です。
そうやって業務を減らし、実感がわくまで半年ほど運用してみます。実感が出たら、そこから先がお待ちかねの「ツールの導入」を検討していくというフェーズ。どんどん改革していきましょう。
働き方改革は足し算ではダメです。引き算か、もしくは代替であるべき。
みんな楽にはなりたいが、協力はしたくない。それが本音。
それでも変わっていかなければいけないなら、やり方をしっかり考えましょう。